過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part3
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910:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 16:25:15.23 ID:vrhOIZAeo
>>780『魔王「夕陽をバックに勇者と殴り合いでけりをつけてみた」』


――夕陽の照らす魔王城。
その頂上、天井が大きく崩れた王の間にて――


――二人の男女が、立っていた。


「オラァ!」

――おおよそ女性の上げるべきでない声が、魔王城に響く。
オレンジ色の光が、二人の血だらけの顔を照らす。
二人は――嗤っていた。

――『勇者』と『魔王』。
古くから、対決が運命付けられていた二人。
幾度とその戦いは広げられ、時には勇者が勝り、またあるときには魔王が勝った。
そのたびに人が繁栄し、また魔族と魔物が繁栄した。

剣、槍、杖、刀、斧、鎚、爪、魔法、etc……。
歴代の勇者と魔王の武器は、全く異なったものである。
そしてこの二人は――共に拳をよく修めていた。
それゆえに魔王城では、前代未聞の『殴り合い』による決着がつけられようとしていた。

『ぐ、ふっ……やるじゃないか、魔王ォ!』

鳩尾に一発、まともに食らった勇者。
勇者は血反吐を吐きながらも、なお嗤っていた。
そして声を張り上げ、答を返すかのごとくに、腕を振り上げ、渾身の一撃を放つ。

「ぐ、ぉっ……!」

頬に一撃を食らい、魔王は地に足を付けたまま後方へずり下がって行く。
やがてその動きが止まると、魔王は口の中にたまった血を吐き捨てた。

「……やるじゃないか、勇者」

『そっちこそ……ゲホッ、やるなァ……魔王……』

両者共に、手酷く傷を負っていた。
無数の打ち身と内出血、いくつかの内臓の損傷、骨にはひびがいくつも入っている。
しかしそんな傷を負っているにもかかわらず、二人にやりと笑みを浮かべあい、殺しあっているとはとても思えない様相であった。

「……楽しいなぁ、勇者……私はお前のような者をずっと待っていたよ……」

『けっ、抜かせ……余所見してるな! 魔王ォ!』

全身に力を込め、体をばねのようにし、勇者は飛び上がりざまにアッパーを叩き込む。
魔王の緩んだ顎に、拳が突き刺さる。

「っ……! ……人が、話している途中に――」

一歩も動かず、魔王は勇者をにらむ。

「――それほどに闘争が好きかぁ! 良いなぁ! 言葉より――拳で語る! どんな無意味な言葉よりも、分かり合える――! だが、しかし――」

しかしすぐに笑みを浮かべて、魔王は勇者の頭を両手で掴んだ。

『――なっ――』

「さて、私としては口惜しいが……嗚呼、実に口惜しいが……そろそろ決着を付けようか、勇者よ――!」

『――ああ、そうだな――』

二人は、しばし恋人同士のように見つめあってから――思い切り、頭を振りかぶる。
長い闘いの決着は、偉大な魔術でも、無敗の剣術でも、秘伝の体術でもなく――『頭突き』であった。

「――ハァ!」

『――オラァ!』

金属どうしがぶつかり合うかのような、おおよそ人体から発されるとは考え得ない音が響く。


――夕陽の照らす魔王城。
その頂上、天井の崩れた王の間にて――


――立っている者は、誰もいない。





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