過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part3
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976:名無しNIPPER[sage]
2016/06/06(月) 23:23:46.96 ID:R9C4jQigo
>>967
タイトル「ボクと君と砂糖醤油」


「やっぱりフルーツサンドには砂糖醤油だよね!」


言うが早いか、まだ瑞々しさを残すデザートにみるみる茶褐色の液体が彩られていく。

ボクの目の前でおぞましい惨状を生み出す醤油ボトル、それを持つ手は残像を残しながら躊躇なくアールグレイを焦げ茶へ染め上げていった。

味覚への冒涜をうっとりと眺める彼女は本当に人間なのだろうか。 おそらく我々人類とは味蕾細胞の進化で分岐したに違いない。


「そんなに欲しそうな目を向けたって、一口しかあげないよーだ」

「いらん。 これはへばり付いたコンクリをうまそうに食べるカタツムリを見つけてしまったときの目だ」


唸り声とともに両目の端をつり上げた味覚欠落患者が、ボクのカルボナーラを和の心で台無しにしていく。 ふざけるなよこの女。

黒い涙を滴り落とすそれを恐る恐る口に運ぶと、舌を粘度のある甘味がまとわりつき、鼻腔から大豆の熟成されたコクが満ち溢れ出る。

控えめに言って不味かった。 思わずティーカップを手に取ると、紅いはずの中身はすでにどす黒く濁り切っている。


「ぷふっ、そんなのだから砂糖醤油の妖精に嫌われるんだよ」

「茶色い厄病神め」


さっきのやり取りで味を占めたのか、今度はもはや芳醇とは言い難い香気を上げる元紅茶をボクの口元に押し付けてきた。

薄まった醤油が頬にかかって熱い。 必死に抵抗していると腕が疲れたか飽きたのか、温くなったカップの液体を自分で飲み干してしまった。


「こんなにおいしいのに」

「それだけはどうやっても理解できないし、流石に分かろうとも思わ、んむっ」


唇に熱、柔らかい感触。 隙間から侵入した彼女がボクの舌をゆっくりと撫でつける。


「どう? これでも分からない?」

「……甘しょっぱい」


甘酸っぱいよりはボクらにあっているのかもしれない。 気恥ずかしさを隠すためにフルーツサンドを一口齧る。

外側から見えないよう念入りにカモフラージュされた錆色の生クリームが、ボクの嘔吐中枢を一突きした。



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