過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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367:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:04:50.33 ID:RYx/9kaJo
折本は暗い夜道の中で光を放つ自動販売機の前で止まり、自転車に乗ったまま飲み物を買っていた。
いや、そんな姿勢でしゃがみこんで商品を取り出すのはちょっと……。
誰に見られているわけでもないのに気恥ずかしくなり、慌てて反対側に目を向ける。そこには寂れた小さな児童公園があった。
368:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:05:43.74 ID:RYx/9kaJo
もう飲み物を買って貰っている手前、強引に帰るとも言い出せず不承不承頷くと、二人とも自転車のまま公園に入ってベンチの前で止めた。少しの距離を空けて、並んでベンチに座る。
……帰りたい。なんでこんな寒い中折本と二人でベンチに座ってるんだ。
折本とか女子ってのはこんな中でも生足出してるし、寒さに強い生き物なのか?でも冷え性とかよく聞くし、わけがわからないよ。
369:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:06:25.94 ID:RYx/9kaJo
「だ、誰のことだよ」
「生徒会の子たちも当然そうだし、前葉山くん紹介してくれた先輩の人とか。全員だよ、ほんと」
あー、陽乃さんか……。内面は知らんが外面は確かにキレイだな、うん。生徒会も雪ノ下に由比ヶ浜に一色に葉山か……。
370:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:07:18.22 ID:RYx/9kaJo
「あー、いや。ちょっと気になることがあってさ、聞きたかったんだけど」
そこで話を区切って折本は紅茶を啜った。俺は誰もいない公園を見るともなく見ながら続きを待つ。
「比企谷、どの子と付き合ってんの?」
371:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:08:11.67 ID:RYx/9kaJo
「会議の前にコンビニ行ってたじゃん?あの部屋の窓から戻ってくるのが見えたんだけど、なんか袋の奪い合いみたいなのしてたっしょ?あれ」
なんか意外なところを意外に見られてるもんだな……。行動として思い当たることはあるが内情は全然違う。面倒だけど訂正しておこう。
「あれのどこを見たらそう見えるんだよ。全然ちげぇ」
372:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:09:06.57 ID:RYx/9kaJo
だからこんな捻くれた人間になってんだろうが、と言いたかったが自重した。自重ってやっぱ大事。
「へー。そうなんだ。意外」
折本はきょとんとしているのか興味があまりないのか、いまいち判然とし辛い表情で呟いた。
373:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:09:54.25 ID:RYx/9kaJo
「……なんで?」
わからなすぎて間抜けなことこの上ない言葉しか出てこなかった。だが、今俺が知りたいことを端的に表しているとも言える。
なぜ、なんで、どうして。いつも俺が考えていることだ。
374:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:10:31.74 ID:RYx/9kaJo
「そうか、いろいろか」
「そうだね、いろいろだよ」
それから二人同じタイミングで紅茶の缶を傾けて飲み干す。すっかり冷えてしまった紅茶を飲んでも体が暖かくはならなかったが、不思議とここに来たときより寒くは感じていなかった。
375:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:11:33.07 ID:RYx/9kaJo
「……なんで好きな奴があの中にいるって思うんだ」
「いるでしょ?そのぐらいはわかるよ。じゃなきゃ比企谷は生徒会なんか入らなそうだし。ねー、誰?」
このまま無視して走り去ろうかとも思ったが、ペダルを漕ぐ力が湧いてこない。
376:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 23:12:13.14 ID:RYx/9kaJo
折本とのことはこの前終わらせられたと思ったのに、俺は過去のトラウマという自己保身のための予防線をまだ張り続けている。そんなもの、もはやハリボテでしかないのに。
それでも守り続けるその奥にあるものは、自分勝手で我儘で、傲慢で、醜いものだ。人に勝手に理想を求めて、甘えてしまいそうな俺の弱さだ。
「…………本当にいないの?」
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