431: ◆jSMhOnCsDM[saga]
2015/09/08(火) 23:36:59.94 ID:fb6BAXWP0
『どうしても一点が欲しいところ』
『この状況では先制したほうがゲームを制すると言っても過言ではありません』
『スクイズも考えられますが、守備も警戒していることでしょう』
色々な意味で、俺は自分を幸せ者だと思っている。誰かも同じようなことを言っていたっけ。あれはたしか…………、
そう、兵学校時代の同期だ。あのあと電話をした以来、連絡は取っていない。どうしているのだろう?
あの憲兵の話によれば失踪したというが、まさか逃げ出すなんてことは、あいつに限ってはないはずだ。あの男は前線での指揮を誇りに思っていたし、そもそも戦いそのものが好きだった。逃げたとしても、本人の意思というのはまずない。
『ロジンバッグを手に取って二、三回軽く放り上げてから、叩き付けるようにして地面に戻します
『白い粉が舞い落ちる』
『二度ほどサインに首を振って、いまセットに入りました』
『少しランナーのリードが大きいような気もしますが足が上がって、第二球』
周囲の異変は察知していた。神通を筆頭に、彼女たちが歪んだ方向に変わっていくのも、俺はしっかりと見ていたつもりである。
それでも彼女たちを本当に怖いとは思わなかった。どうしても嫌いになれなかったのだ。それは彼女たちの容姿ということも、性格ということもある。見ているだけで癒されてしまう、ということもあるだろう。
なにより、歪んでいるとはいえ彼女たちは好いてくれた。正直これが一番大きい。男として、これほど嬉しいこともない。
『ランナースタート、スクイズだ!』
『ああっと、しかし小フライになった!内角高めの厳しいボール、キャッチャーへの低いフライです』
『……さあランナー飛び出している!キャッチャーが追っていく、ショートがカバーに入るっ』
少しだけ実況の声が大きくなったラジオに耳を傾けてみる。どうやら三本間にランナーが挟まれてしまったらしい。事の発端は注意して聞いていなかったが、一つ言えるのは、こうなってしまうと生き延びる可能性がかなり低いということ。もとはといえば先制打を打てないから、こういう無茶をすることに繋がるわけだが……。
事の発端といえば、この状況の発端は誰なのだろう?
聞いた感じでは暁だろうか?でも最初は夕立なのかもしれない。神通は着任が遅かったため、悪くても火付け役くらいだろう。不知火は…………、
いや、彼女は正常だ。何も歪んじゃいない。現にこの状況を打破するべく協力してくれているではないか。
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