過去ログ - 仕事を辞めた俺は超自然現象対策室に再就職した　最終章・後編 -SS速報VIP

過去ログ - 仕事を辞めた俺は超自然現象対策室に再就職した　最終章・後編

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80:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/01(水) 04:57:23.60 ID:Z58xYijg0

「あの、雪子？」

　そしてグラスの酒を煽りながら早速読み始めると、隣に雪子が腰掛けてきて俺の顔をジーッと横から覗き込んでくる。
　心なしかその距離は異様に近く感じて気が気でない……　読書どころじゃなく、再び鼓動は早く脈打つ。

「ごめんなさい、反応が気になって……」

　朗らかに笑いながら、なおも俺を見つめる。

「もしかして――　雪子も飲んでる？」
「ちょっとだけ」

　なるほど……　洋室にある大きなテーブルには瓶入りのリキュールとそれを割るための炭酸水が置いてある。
　俺はあんなの買ってきてないし、だとすると……　俺は知らないぞ、桜子。

「ふふふっ」

　いつの間にか片手にグラスを持って、雪子は酒を一口含ませて陽気に笑った。
　これは駄目だ……　俺は知らないからな、桜子。
　酔いが回り始めて肌がほんのりと赤くなる彼女は妙に艶かしく、気を取られてしまうが……　目の前の文章を読むことでなんとかそれを誤魔化した。

　一文、二文……　行から行へ。
　後でじっくり読むとして、導入の部分を流し読みしていく。
　親しい人間だから――　そのような補正がないとは言い切れないが、しかしそれを抜きにしても雪子の言葉、文章には惹き込まれるものがある。

　そして気付けば……　流し読みのはずがじっくりと読み耽っていた。

「いかんいかん……　後でじっくり読むんだった」

　独り言を呟くようにして己に言い聞かせ、そうして読むのを止める。

「どうでしたか？」
「正直言って面白かった……　続きが楽しみだ」
「ありがとうございます……！」

　それは、本心は本心……　実に正直な感想だった。
　酔っているから言い表す言葉がうまく浮かんでこないけれど（もとから語彙が少ない人間なので言い訳になるが）、素直に、正直に面白かったのだ。

　こんな小学生みたいな感想でも雪子は嬉しそうに微笑んでくれた（酔っているせいもあるだろうけど）。

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