過去ログ - 紬「カチューシャ、前髪を上げて。」
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20:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:21:09.32 ID:CuC+Dd1t0
夕日が山の端に消えてしまう前に帰ろう。
下り坂もわたしが自転車の前だった。
上りは淀んで生ぬるく感じられた風がきもちいい。
前じゃないと味わえないから、澪ちゃんはそう言って特等席を譲ってくれた。
風が吹く。前髪がなびいて額があらわになる。
視界良好。自転車はぐんぐんスピードを上げていく。
プール帰りの小学生。野球のユニホームを着た中学生。買い物帰りのおばさんに、忙しそうにケータイを片手に汗を拭くサラリーマンのおにいさん。
その全てを追い越していく。
スピードが上がるにつれて、わたしの腰を掴む澪ちゃんの腕の力が強くなっていった。
真っ赤に染まる夕焼けの中で、頬を切る風と背中に伝わるやわらかい体温が、
世界の全てに思えた。
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