過去ログ - 紬「カチューシャ、前髪を上げて。」
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25:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:25:21.16 ID:CuC+Dd1t0

同時に警報機が鳴り始めた。
澪ちゃんはわたしに背を向けて大きな声で何か話している。
カンカンカンカン…と鳴り響く音に消されて、何を言っているかわたしにはわからない。

言えなかった一言を伝えたくて、電話が終わるのを待ったけれど、それより前に電車が駅に滑り込んでくるのが見えた。

わたしは周囲を構わず、最後の一言を叫んだ。

それは電車にかき消されてしまって届かなかったかもしれない。
でもわたしが何か声を出したことだけは伝わったのか、澪ちゃんは振り向いてくれた。

それから左手を大きく上げてひらひらと振った。
手首に赤く、蚊に刺された痕を見つけた。

わたしもそれに応えるように胸のあたりに小さく上げた右手を左右に振った。
よく見ると、わたしの右手の甲も蚊に刺されていた。


走って改札を抜け、閉まる間際の電車に飛び込む。

猛ダッシュのせいか、心臓がばくばくと脈を打っている。

息を切らして飛び乗ってきたわたしを、車内の乗客の人たちは迷惑そうに見ていたけど、そんなことちっとも気にならない。

大きく息を吸って、吐き出す。深呼吸を繰り返す。
それでも鼓動の激しさはやむことがない。
鮮やかな赤に染められた電車が、わたしを運んでいく。

電車が終着駅に着く頃、ようやく心臓が落ち着いて、握りっぱなしだった左手を開いた。



汗にまみれた月見うどんが、そこにあった。





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