過去ログ - 紬「カチューシャ、前髪を上げて。」
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41:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:40:31.32 ID:CuC+Dd1t0
「ねぇ。覚えてる?」
夏の日。夕立にあった。
降水確率は10%。
ふたりは傘を持っていなくて、突然の雨に慌てて駆け込んだ。
「あの日とおんなじね」
急いで走ったせいなのか、買ったばかりの靴のサイズが合っていなかったせいもあって、わたしは転んで膝を擦りむいた。
雷が鳴った。
怯えたわたしはもう、立ち上がることさえできなかった。
すると彼女は黙って背を屈めてわたしを背負うと、そのまま走りだした。
雨に濡れた彼女の髪に散らばった水滴。
白い肌に髪をひと筋張り付けたまま。
びっくりした!、降ると思ってなかったよね〜…、って、
そのままおしゃべりしていたら、いつの間にか雨がやんでいた。
雷なんか、ちっとも怖くなくなってた。
「覚えてないの?」
しょうがないね、子供の頃の話だもの。
彼女はそう言って笑うと、また赤い傘を広げた。
顔を隠すようにしながらくるくると傘を回し、自分も一緒に一回転してみせる。
スカートがふわっと翻り、わたしに背を向けるとまた、歩き出した。
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