過去ログ - 紬「カチューシャ、前髪を上げて。」
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46:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:44:28.46 ID:CuC+Dd1t0
「ねぇ覚えてる?
夏休みの宿題で星座の観察したときのこと。あの日も星がきれいだったね。
それで”ちょっとでも空に近いところのほうが、きっともっと星がきれい見えるよ”って、
わたしがワガママ言って…無理にあなたを引っ張って学校の裏山に登ったんだったね」
夜空を大きく横断する天の川。
その近くに、大きくS字を描くように光るのがさそり座。
「山の上は空気が澄んでたね。
あの日はとくに天気がよくて晴れていたから、天の川がとってもきれいだったわ。
あんまりきれいだったからふたりで寝転んで、ずっと見てたよね。
それでずっと寝転んでいたからいつの間にか寝ちゃってて…」
さそり座の星たちの中に赤く光る星がひとつある。
赤い星の名前はアンタレス。
遠くわずかに明滅を繰り返しているように見える。
「気がついたら随分夜遅い時間になってて。しかも懐中電灯の電池が切れちゃって。真っ暗な帰り道がすっごく怖くて…
わたしもう、今にも泣きだしちゃいそうだったわ。
でもね。泣いちゃダメ、泣いちゃダメ、って、必死に泣くの我慢してたの」
アンタレスから少し離れたところにもう一つ赤く光る星がある。
それが火星。
「だって、普段とっても怖がりで泣き虫のあなたが泣いていなかったんだもの。
わたし、きっとひとりじゃ帰れなかった。
あなたがいてくれたおかげ。ぎゅっと手を握ってわたしを引っ張っていってくれたおかげ。
ありがとう。わたしね、あの夜のこと、ふたりで手をつないで帰った夜のこと、
一生忘れないと思う」
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