過去ログ - 紬「カチューシャ、前髪を上げて。」
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57:けいおんSS[sage saga]
2015/07/01(水) 22:58:29.19 ID:CuC+Dd1t0
「さて、帰りましょうか」
「え。もういいのか?」
「だって今日曇ってるから夕日見えないし。明日の朝、家出るの早いし」
「いやまぁそうなんだけど…ここに来たいって言ったのムギはじゃないか」
「そうよ。このしんど〜〜〜い上り坂をね。
自転車の後部座席に乗って優雅にのんびり上るのがわたしの夢だったの〜☆」エヘ
可愛らしい眉が垂れ下がる。
最近短めに揃えた前髪のせいで、年齢以上に幼く見えるムギ。
この可愛らしい女の子のお腹に黒いものが潜んでいるなんて、誰が思うだろう……
「…な……それなら原付でもよかったじゃないか……!」
「澪ちゃんご自慢のベスパ?ああ、あれじゃダメよ。
だって、筋肉痛はもちろん、あのときのわたしが体験した感覚全てを澪ちゃんに体験してもらうのが今回の狙いだったんだもん。
おかげで当初の目的はほぼ達成したわ☆」
「そ、そんなことのために…大体あのときだって漕ぎたいって言い出したのムギだろ!わたしは途中で替わろうか?って何度も言ったじゃないか!」
「ふーん、自分に都合のいいことは随分細かいところまで覚えているのね」
…もう何を言ってもどうにもならない気がして、わたしは大きくため息をついた。
雲に覆われて夕日は見えないし、灰色の街はお世辞にもきれいだとは思えなかった。
京都タワーもちゃちなロウソクにしか見えない。感動を呼ぶ要素はひとかけらもなかった。
せめて雨が降らなかったことだけが幸いかな。
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