過去ログ - 男「宇宙人に会った」
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10:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:27:09.65 ID:kHvSRcn3O

「私は両親に愛されていました。
望むものはだいたい手に入ったし、特に不満はなかった。
なのに、とてもむなしくなったんです。
なぜ生きているのか、私には分からなかった」


なぜ、俺はこんな幻の女の話なんかを真剣に聞いているのだろう。
本当に馬鹿馬鹿しい。


「私は生きている刺激を求めて、犯罪を繰り返しました。
だけど、自分を傷つけている内はまだ良かった。
私は欲しくもないお金を盗むために人を刺したんです。
その人は死にました」


無表情な仮面はピクリとも動かず、俺の方が辛くなってしまい、視線を窓に移した。
ガラスには小さな虫がまとわりつき、ごちゃごちゃと動き回っていた。


「私は何年もかけて自分のバカさに気づき、何年もかけて更正しました。
やっと両親に謝れるはずだった。
ですが、私の刺した相手の遺族が私の両親を襲いました。
母は死に、父は未だに目を覚ましません。
私は、その遺族に私こそ殺されるべきだと思った」

「じゃあ、なんでウチにいるんです?」

「私はあなたにも恨まれなくちゃいけない。
きっとあなたは覚えていないでしょうが、私は昔に両親と地球に遊びに来たことがあります。
その時に、私はあなたと会った」

「まさか……二十年前のことか?」

「ええ」

「……この野郎!!」


俺は彼女の胸ぐらをつかみ、力一杯壁に押し付けた。


「あのとき両親は離婚寸前だった!
俺が宇宙人に会ったなんて言わなければ、二人は別れてたんだ!
そのまま何年もいがみ合って、妹まで巻き込まれることもなかった!
妹まで死ぬことは無かったんだ……!」


彼女はなにも答えずに目を伏せた。
初めて表情を見た気がした。


「俺は今更恨みなんて抱えたくなかった……!
なんで会いに来やがった!」

「……あなたが死んでしまいそうだったからです。
私はあなたを死なせたくない」

「ふざけるな!」


俺は彼女を殴り付けた。
それと同時に手が小刻みに震え出す。
自分の姿と、父親の姿が被った。


「申し訳ありませんが、私はあなたに殺される訳にはいきません。
それに、私はそろそろ行かなくてはいけません」

「……」

「さようなら。
最後にあなたと会えて良かった」


彼女は震える俺を取り残し、鍵を開けて外に出た。
外からはなにかの機械の作動音が聞こえて、すぐに消えた。


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