過去ログ - 男「宇宙人に会った」
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5:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:21:06.25 ID:kHvSRcn3O
家の扉の下の鍵を開けて、上の鍵穴にも鍵を差し込んで回した。
別に盗られたくないものがあるわけでもないのに、俺は習慣で鍵を二つかける。
そして、雨の日なんかはその使い勝手の悪さにイライラしながら、二つの鍵を開けていた。
扉を開けると、今朝と同じ姿で彼女が俺を出迎えた。


「おかえりなさい」


何年ぶりかに聞いた言葉に、俺は妙な感情を覚える。
嬉しいのか、それとも馬鹿馬鹿しいのか。
俺は分かりたくなかった。


「まさか、まだいるとは思いませんでしたよ」


目に映るものは、相変わらず灰色だ。
なのに、彼女の白さだけは、その中で一際輝いていた。


「私はあなたを一人にしたくないんです」


彼女の下らない言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。
一人にしたくないだって?


「僕は今でも一人ですよ」


彼女はなにも答えず、俺を奥へ先導した。
五千円で買った、小さなプラスチックのテーブルに野菜炒めが乗っている。
ふと気がつくと、荒れ放題だった部屋の中も綺麗に片付けられているようだ。
なんて準備のいいことだろう。
俺は笑うしかなかった。


「どうぞ。召し上がって下さい」


言われなくても俺は炊飯器から米をよそって、野菜炒めに箸をつけた。
向かいで彼女も野菜炒めを食べ始めた。
なんでもない料理のはずなのに、身に覚えのない味付けで、俺はイライラした。


「出来るだけ早くいなくなって下さい」


風呂上がりにハンドタオルを頭に巻いて、俺はそのまま座布団に寝転んだ。
髪を乾かすのは明日でいい。
そう言えば、彼女はどこで寝ているのだろう。
壁の方に目をやると、彼女は壁に背を預けて外を見ていた。

俺も窓の外を見ると、月がぽっかりと浮かび、夜空に丸い穴が空いたようだった。
俺は彼女に布団も貸さないまま、重たいまぶたをそっと閉じた。
明日も俺はバイトだった。


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