11:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/13(月) 18:02:40.31 ID:pbmAn6xEO
あの人の名前がなんだったのか、今の俺には思い出せない。
再び現れた彼女は、あまりにもあの頃と雰囲気が変わり、俺には思い出す手がかりにならなかった。
しかし、ふんわりと漂っていた花の香りを思い出す。
白い作業着には似合わない、柔らかくて安心するような香りだった。
なぜ、俺は彼女を引き留めなかったのだろう。
「引き留めるもなにも」
そっと呟いてみても、今さら後悔はぬぐえなかった。
あの人は死んでしまったのだろうか。
遠い銀河のことなど、地球人の俺には知るよしもなくて。
もし、もう一度会えたら、あの人に謝れるだろうか。
そんなことを思いながら、仕事の帰りにふと川辺によると、そこにはカラフルなUFOが当たり前のように景色に馴染んでいた。
「……死ねませんでした」
俺に気がつき、自嘲気味に笑う彼女の手を、僕は再びつかんだ。
僕たちはまた、海へ向かって走り出していた。
ー終わりー
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