9:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/13(月) 18:00:20.85 ID:pbmAn6xEO
はっと目が覚めると、僕は自分の部屋のベッドで横になっていた。
外が騒がしいので、扉をゆっくり開けると、そこには妹が立っていた。
「お、お兄ちゃん!」
なぜ驚いた顔をされるのか分からないまま、妹は玄関の方へ走っていった。
それについていくと、玄関のそばの窓は赤く輝き、扉の前に母が立っていた。
「どういうこと……?」
母は表情を歪めて僕を見る。
そばには警察官が立っていた。
「えっ。あの子が息子さんなんですか?」
呆気にとられた二人組を前に、僕は大体の状況がわかった。
だけど、ぺこぺこと頭を下げて扉を閉めた母に、まくし立てるように状況を説明された。
「アンタが幼稚園からいなくなるから、警察にまで来てもらったのよ!
先生たちもアンタのこと探し回ってる!
なのに、いつのまに家にあがりこんだのよ!」
あがりこむ、と母は言った。
そんな母に言えるのは、一言だけだった。
「僕は宇宙人に会ったんだ」
母はもう一度呆気にとられて、僕のことを睨み付けた。
「いい加減にして。
アンタその年になって、まだそんなバカみたいなこと言うわけ?
なにが宇宙人よ!」
あまりに頭ごなしに否定するもんだから、僕はつい反論してしまった。
煌めく宇宙船、清潔で無駄のない船内、白いワンピースを着た女の子。
否定されればされるほど、言葉は熱を帯びていった。
そしてとうとう、母は顔色を変えた。
「アンタ、本気で言ってるの?」
ここまで来たら引き下がることも出来ず、僕は頭を縦に強くふった。
母は思い詰めた顔をより険しくして、父を悲鳴のような声で呼んだ。
「アンタのせいよ!」
「お前がちゃんと子供の面倒をみてないからだ!」
いつも通りに繰り返される喧嘩を、僕はもう見飽きてしまった。
自分の部屋にそっと歩いていくと、妹が扉のそばで待っていた。
「宇宙人に会ったって……本当?」
気まずそうな顔で僕を見る妹は、きっと両親と同じ事を思っているのだろう。
僕はなにも答えずに、部屋の扉を開けて、音をたてずに閉めた。
空に浮かぶ月はキラキラと静かに光って、僕がなにを思っても変わらずにそこにいた。
それを冷たさと受けとるか、温かさと受けとるかはその人による。
今日の僕は前者で受け取って、月の光が届かぬように、布団を被って目を閉じた。
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