130: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2015/07/23(木) 22:06:52.38 ID:Ut9bCkLSo
盗賊「……さあ。どうだろうな」
低い、少し掠れた声で彼はさも興味なさげに答えた。
その風貌は旅人と思わせるもので、擦り切れた外套と深く被った帽子が特徴的だった。
黒、と表現するのが正しい。帽子の下の彼の表情は暗く、陰気な様子だった。
客「アンタ、旅人だろう。勇者様の話とかよく聞いたりしないのかい?」
盗賊「聞くさ。だが、大して面白味のある話ではないさ」
盗賊はグラスを空にすると、数枚の硬貨を置いて席を立った。
客「けっ。なんでえ……ツレないねえ」
酒屋「まあまあ。それにしてもあの方……見た事ありませんか?」
客「ばーか。見ようにもでっけえ帽子マブカで被ってりゃ、顔も見れねーよ」
酒屋「ふーむ。確か勇者様のパーティに、あの様な出で立ちの男が居た気がしましたが……」
客「あー? そんな馬鹿な。王都で有名な、黒い旋風とか言う義賊みたいなヤツだろ、それ」
「だとしたらあんな陰気な男じゃないな。それに黒い旋風ってヤツは正しく、風の様に疾いって噂だぜ!」
酒屋「ははあ……。確かに、そうですね。あんなに足を引き釣り歩いていては、風なんて夢のまた夢ですから」
「それに勇者様のパーティの方なら、こんな所で一人で飲んでいるわけもありませんね」
客「そういうこったぁ! 気を取り直して祝福だ! 魔王は死んだ! これからは平和な時代だーっ!」
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