20: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2015/07/15(水) 10:04:55.04 ID:9XTpaLhVo
ある日の晩の出来事だった。
その日はとても月が綺麗で、相変わらず勇者は鍛錬に出かけていた。
盗賊がぼんやりと、夜風に当っていると女部屋の扉が開く。
僧侶「………あ」
盗賊「ん……なんだ、僧侶か。また寝てないのか」
僧侶「少し寝付けなくて。夜風に当たりに行こうかと思って……」
少し、伏せ目がちにそう答える彼女の姿は何処か淫靡に思えた。
以前、魔法使いが言っていた言葉が脳裏に蘇る―――まさか、と。
盗賊「……一緒に行っちゃ、悪いかな」
思わず、口をついて出た言葉。それは絞りだすような、少し掠れた声だった。
僧侶「え?」
盗賊「……悪いな、聞き逃しといてくれ」
バツが悪そうに盗賊は頭を掻いて、部屋に戻る。
僧侶は少し、戸惑いながらもその背中に声をかける事はなかった。
盗賊「これで勇者が部屋にいるなら、こんなに溜息もでないのかね……」
2つあるベッドはどちらも空だった。
薄々は感じ取ってはいた。勇者が鍛錬と言いながらも朝方まで帰ってこない事も多くなった。
いつからだろう。自分に言い聞かせる様になったのは……。
彼女には、彼がお似合いだと。
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