4: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2015/07/15(水) 00:41:52.30 ID:9XTpaLhVo
雨の日は嫌いだった。激しくなる程にズキズキと古傷が痛む。
宿屋でベッドに潜り、雨の音を不快だと耳を塞ぐ。
盗賊「…………独りとは、こんなにも寒いものだったかな」
寒い。手足の先がキンと冷えている。
冷えた指先を擦る。温まらない指先を擦る、その仕草は祈りの様にも見えた。
生まれは貧民街。天涯孤独の身であり、喧騒の中で生きてきた。
行く末は暗殺者か、野盗か。ならず者である事は確定していたと思う。
―――1年ほど前だった。
「やめなさい」
凛とした声があの日、彼を貫いたのだ。その声の主は白く、気高かった。
貴族の家へと忍び込もうとした彼を偶然に見かけた彼女は強く咎めた。
146Res/106.10 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。