過去ログ - 海未「海の日ですね」ことり「そうだね!」
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29:名無しNIPPER[sage]
2015/07/20(月) 20:15:54.41 ID:KWeVhblp0
ことり「わかったー! 後で交代ねー」

ことりが肘掛けを上にあげると私のすぐ隣に座り直した。

温もりがそれだけで感じられそうな位置の近さに今更ながらにどきりとする。

ことり「海未ちゃん、ばんざーいっ!」

海未「えっ?」

ことり「ほら、こうやって、ばんざーい!」

「その高さだと万歳というより降参の方が意味合いとして強いのでは?」と言いたくなったけど、また真面目でつまらないと言われるのは辛いから、おとなしく降参してみた。

ことりが両手を私の脇の下に入れてグイッと私を引き寄せて抱きしめる。

ことり「苦しくない?」

海未「......だ、大丈夫です」

ことり「海未ちゃんあったかーい」

海未「ことりもあったかいですよ。その、......お、落ち着きます。」

ことり「そう? なら、よかった」

ふふっと笑うと、服を通してその振動までが伝わってくる。

降参したままの手をどうしようか考えあぐねて、ことりの腰まで下ろして、抱き寄せた。

それだけで、グッと距離が近くなった気がした。

ことりもそう思ったのか

ことり「海未ちゃん、気がききますね」

だなんて言ってくる。

海未「苦しくないですか?」

ことり「嬉しくて胸が苦しいです」

海未「いや、そういうんじゃなくて」

ことり「耳赤いね」

海未「......ことりなので」

ことり「そっか、そっか、ことりだからかぁー」

私が抱き寄せ返す、だったそれだけのことでことりが嬉しそうに笑うのがたまらなく嬉しかった。

電車の中には行きの電車の中と同じ吊り広告が垂れていた。

内容は、某という芸能人とこれまた某とかいう芸能人のスクープ写真掲載! だったり、ついに離婚! 3年前から別居していた!だの、少女漫画では見ることのなさそうな物語のその後の結末だったりするものだ。

海の潮風にあたったり、何かと走ったせいで疲れた身体にことりのあたたかさがゆっくりと眠気を誘う。気がつけばことりの寝息が聞こえていた。

海に行こうとはしゃいだり走ったり私を破廉恥だの真面目でつまらないだの罵ったり。

今日のことりはとにかく元気だったからさぞかし疲れたのだろう。

私はことりを起こさないようにことりに腕枕をしつつ、自分も眠りにつけるような体制を整えた。

うとうとしている頭でボンヤリと思う。

もし、これから先、ことりと離れるようなことがあったらどうしよう。

周りに、ことりと一緒にいられるための対価を支払えずに、ことりといることができなくなったらどうしよう。

ことりが今日、私にしきりに日焼け止めを塗っていたのが、日焼けによって私と海に行ったことを誰かに知られたくないためだったら、どうしよう。

全て私の杞憂で、あるはずもないことなのかもしれない。

心配性な私の杞憂であるなら、それでいい。

ことりがそんな私の情けない姿を見て「海未ちゃんはまたー」とくすくすと笑ってくれるなら、それでいい。

「ことり」

と、呼びかける。

返事はなくて、代わりに寝息が聞こえてくるだけだ。

ことりがちゃんと寝てくれていることを確認してから、私は軽く触れるだけのキスをして、たまらず、重力に逆らい続けた瞼を閉じて、数駅分眠ることにした。


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