13: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/07/21(火) 10:59:47.29 ID:7uNH2Jhi0
そう聞いて安心したのか妖精さんは眠ってしまう。
なるべく起こさないように手早く修理してしまおう。幸い、尾翼に少し穴が空いてただけなので修理はすぐに終わった。
零戦を矢に戻して一息つくと、すぐ後ろで物音がしたので慌てて振り返ると夕張さんがいた。
彼女は少し困ったようにオリーブ色の前髪を指でいじっている。
「あの、これは、そのですね」
「いいんじゃない?」
「え?」
「別にその零戦を初めから独力で直したからって、あの艤装も試そうなんて言わないよ」
夕張さんの視線が一度横に動いた。その先にあるのは防水シートに覆われた龍鳳の艤装。
「それとも……付けてみる?」
その一言は何気ない言い方なのに血が凍ったような気がした。
知ってるとは思うけど。そんな前置きをして話す夕張さんの表情は硬い。
「兵装こそ流用できるけど、私たちはみんな固有の艤装を持ってるでしょ? 龍鳳の艤装を扱えるとしたら……それはやっぱり大鯨だけだと思うよ」
「でも私は! 私は……あの艤装に拒まれてるんですよ……」
適した艤装は私たちの体になんの違和感もなく馴染んでくる。
装備した兵装によって重さの違いや扱いづらさを感じはしても、艤装そのものには初めからあるのが当たり前みたいな一体感がある。
でも龍鳳の艤装にはそれを感じられなくて……そして稼働に失敗した。
私が身につけても動かず、ただのゴテゴテしただけの鋼の置物に成り下がってしまった。艤装が動かないんじゃ飛行甲板だって少し凝っただけのただの板でしかなくて。
龍鳳の艤装をつけてみようとしたのは一度や二度じゃない。でも結果はいつだって同じ。
練度の問題じゃなくて、もっと根本的な何かが欠けてるせいで……。
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