31: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/07/27(月) 01:16:37.28 ID:x8AHwltW0
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
戦闘が生起するまで、みんなが出てから一時間もかからなかったと思う。
夕張さんたちが伝えてきたのは敵艦載機の迎撃に入ったのと、約二十機から成る艦載機の一群が八雲めがけてまっすぐ向かっているということだった。
すると待機していた鳳翔さんが艦長さんに少しの間だけ艦を減速させるように頼んだ。
そのまま鳳翔さんは瞑想するように目を伏せる。
少ししてから目を開けた鳳翔さんは面白い小話でも聞いたように、口元を隠してくすりと笑う。
「どうして笑ってるんですか?」
「いえ、直掩機の傘もない鈍足の空母なんて敵から見たらご馳走になるんでしょうね」
鳳翔さんの言いたいことを悟った。
「ダメですよ……行くなら私も一緒に」
「それこそいけませんよ。夕張さんもこの艦を守れと言ってたじゃないですか」
「鳳翔さんだって、その中に入ってたじゃないですか!」
「……そうでしたね。でも大鯨さん、私たちは時に選択しなければなりません。そして選ぶことは代わりに何かを捨てるということでもあります」
鳳翔さんの言葉が私に刺さる。決めずにここまで来てしまった私を責めるように。
……ううん、責めているのは鳳翔さんじゃなくて私自身が。大鯨にも龍鳳にもなりきれていない私自身が、自分の不安定さをなじっていた。
「……大丈夫ですよ。全部避けてから帰ってくればいいんですから」
簡単に言ったことがちっとも簡単じゃないのは分かっていた。
私にはもう肯定も否定もできない。鳳翔さんをまともに見ることもできなくなっていたから。
「ちょっと行ってきますね。私もフーカデンビーフを食べてみたいから、今日は大鯨さんに厨房をお任せします」
すぐ近くまで出かけるような気楽さで言われる。
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