39: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/07/27(月) 09:32:17.60 ID:x8AHwltW0
そこまで考えて、今度は急降下爆撃を避けるため右に体を回す。でも艤装が重くて動き出しが遅い。
「回ってえー!」
機関が咳き込むような音を出して体や艤装が軋む。
動く、と思った途端に一気に体が旋回していた。
自分の想像よりずっと速い回転に角度がつきすぎて、振り回されて踏み止まろうとした足が水面の上で空回りする。
重心が分からなくなって階段を踏み外すような嫌な感覚がした。海面が一気に顔に近づいてきた。
「あっ――」
声が声にならないうちに水の中に倒れた。
これが……水の中……って浸ってる場合じゃないよ!
「ぷはぁ……しょっぱ……」
急いで海中から体を出すと、ちょうど爆撃機が後ろを行き過ぎて離れた場所に投弾して魚雷の航跡も逸れていってた。
「……もしかして今ので避けちゃった?」
気が抜けそうになって、すぐに鳳翔さんが心配になった。
見ると向こうも全部避けたらしく、去りゆく敵機の一群を見上げていた。
敵機の攻撃は空振りに終わったんだ。湧いてきた実感に急に腰が抜けた。
拍子抜けしたのか安心したせいかはもう分からない。
本当はまだ気を抜くには早い。それでも膝が笑って立てなくなっていた。
「あ、あれ……」
海中に沈まないだけで、ぺたりと水面の上に座り込んでしまう。
立てない。どうしようと思っても一人では立てそうになかった。
だから、今は静かになった海でみんなの無事を願う。
私は……情けないのかもしれない。それでも私は私の為すべき事を成せたような気がする。
そう思えると、なんだか心が軽くなったような気がした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
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