過去ログ - 村娘「勇者様ですよね!」勇者?「違うが」
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名無しNIPPER
[saga]
2015/07/31(金) 14:17:16.11 ID:7PIjQxPMO
──────── 最後にサキュバスの一人を見送った跡には、風の音すら鳴らない。
それまで止まっていた時間が動き出し、そして再び静寂が戻って来た。
だがそれは時間が止まっているのではない。
僅かな停滞を挟んだ後に動き出す為、波が引いた跡に残る寂しさに近いのだ。
少なくとも『彼』は、そう思っていた。
───── バタン
小さな一軒の小屋の扉を一度閉じた『彼』は、山道へと続く小屋の裏手へ回り込む。
そこにはつい先日『彼』が作った墓標がある。
かつて愛し合っていた、妻が眠る墓。
勇者?(『お前』のおかげで、暫く退屈はしないみたいだよ)
壮年の顔つきだった『彼』は墓の前で膝を着くと、一瞬だけ幼い子供の笑顔を作り向けた。
その様を見る者が居れば或いは恐怖したのかもしれない。
しかし、『彼』にとって本来の姿とは、墓標の中で眠る者の在りし日に見せていた幼い姿だった。
暫く微笑む。
『彼』はゆっくりと立ち上がり、山道を眺めながら墓標へ語りかけた。
それは、短い別れを告げる言葉。
勇者?(まだ上手く調節が分からなくてな、暫く会えないみたいだ)
勇者?(ここで眠るお前にとっては二十年近い別れになってしまうが、許せ)
『彼』は背後の小屋へ歩き出す。
山にある筈の風も、虫も、動物もその姿を見守るかのように静かである。
小屋の前へ向かいながら『彼』は再び壮年の男性となり、木製の扉を開きながら一言残した。
勇者?「……じゃあな、 『魔王』 」
軋む音が鳴り響き、その扉が閉じたのと同時に『彼』は世界から消えた。
刹那、止まっていた時間が動き出した様に
その小屋がある山を一斉に突風が襲う。
数時間前までいたサキュバス達の気配も、数日前に来ていた村娘の声も、勇者と呼ばれていた壮年の『彼』も、そこには残っていなかった。
誰もいなくったその小屋に、遅れて来てしまった一人の若いサキュバスが訪れた時。
人知れず時間が動き出したのだ。
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