9:名無しNIPPER[saga]
2015/08/02(日) 03:43:05.03 ID:V8gzDOoiO
京太郎「あー、そっか。残念! まぁ思い返せば集まったのは野郎ばっかだし、宮永だってむさ苦しいなかにいたくはねーよな」
少年は屈託のない笑顔でそう言うと、使い込まれているであろうマウンテンバイクに跨り、ペダルに足をかけた。それはもう行くという意思表示であり、咲は正しくそれを汲み取って安堵した。
京太郎「じゃあ行くわ。またな」
そう言い残すと、勢い良く走り出した少年はあっという間に陽炎の向こうに消えて行った。
咲はしばらくそこに立ち尽くし、熱を帯びた景色をぼうっと眺める。
――もし。もし、彼の伸ばした手を掴むことがあったら。その時…その先には、どんな光景が広がっているだろう?
そんな思索は、熱に浮かされて漂い、青い空に呑み込まれて消える。
つまらない妄想だった。もしくは淡い期待とでも言おうか。
行くつもりのない場所にどれだけ思いを馳せても意味はない。
頬を伝った汗が顎から滴り落ちて、アスファルトにしみを作る。
その場に留まっていた影はいつの間にかどこかへ行き、やがて容赦なく注がれる陽光に溶かされ、しみさえも消えてしまった。
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