91: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2015/08/28(金) 03:44:04.51 ID:bXvlyvW5o
――とある廃砦
犬勇者「はっはっはっは……」(あー、疲れた……)
森を抜けて、やたら滅多に走った。
匂いを追って闇雲に走ったが、まだ匂いを嗅ぎとるのに慣れていないせいか時間がかかった。
犬勇者(とにかく、此処が一番……匂いがキツい!)
廃砦から漂う匂いと、呪術師の下着からの匂いとが完全に合致した。
そうです、俺は今、彼女の下着を被っている―――許せ、呪術師。
犬勇者(とにかく、行くぞ……なんか、嫌な予感がするんだよ……)
半開きになっている扉を抜けて、砦内へと侵入する。
人気はなくて、どうやら魔物や大勢の人間がいる気配はない。
だが、聴覚も犬となった今では強化されている。最上階から、微かに声が聞こえる。
犬勇者(……最上階から、か……! よし、行くぞ……っ!)
螺旋階段を駆け登る。最上階へと近づくに連れて、呪術師の匂いも濃くなる。
甘ったるくて、優しい匂いだ―――この匂いが、どうやら俺を落ち着かせてくれている様だった。
犬勇者(冷静に考えて、本当に気持ち悪いな、俺。犬じゃなかったら、本当に変態だ)
下着を被った犬が駆ける。その姿ははたから見れば……なんなのだろう。
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