45: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/08/24(月) 09:48:59.97 ID:aYmvm1JN0
『あの……そろそろ始めます。それとしばらく敬称略になりますので、よろしくお願いします』
頃合を見計らったように神通からの通信が入る。
こうなったら、とことんまでやるしかない。
少なくとも、あたしには一つの区切りとして必要なことに思えた。だから全力を尽くす。
あたしと鳥海が所定の位置に着くと、神通が主砲を空に向ける。
空砲の煙が模擬戦開始の合図になり――轟音が鳴った。
互いに機関を唸らせ、砲撃を交えながら突撃していく。
ただ直進するのではなく、狙いを絞らせないために不規則に左右に切り返しも混ぜる。
初めは散発的に思えた砲撃も距離が近づくにつれて激しくなっていく。
水柱が近い。そろそろ命中弾をもらってもおかしくない。
演習などの模擬戦で使用するのは実弾ではなくペイント弾になる。
これを先に当てて塗りたくれば大破判定を取って勝利となる。
もっとも、これだけだと装甲の厚みや薄さが反映されないので、艤装には特製のワックスが塗られている。
ペイントを弾く性質を持っているので、これを塗り重ねることで艤装の厚みを擬似的に再現できる。
体には塗れないから……そっちは諦めろってことだ。
何発か当たるのを覚悟していたけど、どちらも命中弾がないまますれ違う。
水上を旋回しながら体を捻って横向きに砲撃を続ける。
こうなると互いに円を描くような形で相手の背中を取ろうとする。
どんな相手でも背面は弱点になる――これは深海棲艦も例外じゃない。
普段はこういう一対一という状況が起きにくいだけで、発生すれば高速艦の戦い方としては自然とこうなる。
自分が有利に、相手には不利になるように尻を追い回す。
戦闘機と同じドッグファイト――この場合は巴戦か。
もっとも艦娘の砲撃は角度に自由が利く分、完全に背面を取ることは少ない。そうなる前に優位を取り始めた段階で決着が着くからだ。
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