過去ログ - 摩耶「あたしの妹離れ」
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59: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/08/24(月) 10:07:46.93 ID:aYmvm1JN0



「司令官さんの力になりたい」

聞こうとしてた答えとはちょっと違うけど、まあこれはこれでいいや。

「ちょっと頼りなさそうだしなあ」

今はもうそんな感じはなくなってきてるけど。秘書艦やってれば少しぐらいは見る目も変わる。

「そんなことないよ。司令官さんは頼っていい人だよ。でも頼りすぎてもいけない人。前に司令官さんが大ケガしたことあるでしょ?」

「木曾の事件か?」

「そうそう。事件じゃなくて事故だけど。あの時、司令官さんを運んだり看病してたんだけど」

覚えてる。ちょうど鳥海が秘書官になって少し経ったころの話だったかな。

思い返してみると鳥海のあいつへのこだわりはこの頃に始まってた気がする。

「その時に思ったの。この人は私たちをよく見てよく知ってる。良いことも悪いことも全部抱えるだけ抱えて最後には独りだけで消えちゃいそうだって」

鳥海は小さく笑った。それは自分自身を笑ってるようにも見えた。

「変だよね、ただの想像なのに。でも、それがすごく悲しくて、嫌だったの」

……妹は何かを感じ取ったのかもしれない。

たぶん鳥海本人にしか分からない――けれど大切なことを。

「だから私はあの人の手をつかみたいの。いつか独りで遠くに行ってしまわないように」

あたしと鳥海はやっぱり変なとこが似てる。

つかみたい相手が違うだけで、そうしたい相手がいるんだから。

あたしも湯船に思いっきり浸かりたくなったから顔ごと沈む。

鳥海があいつの手をつかむなら、あたしは鳥海をつかもう。

いつか二人が消えてしまわないように。そんなふざけたことが起きないように。

あたしもいつまでも記憶の陰に怯えてられないってことか。






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