64: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/08/24(月) 10:12:12.16 ID:aYmvm1JN0
「最期の時まで鳥海の手を離すな。あたしたちにはできなかったことだ」
余計だと思ったのは推定から確信に変わっていた。
そう分かっていても提督にだけは言わずにいられない。
こいつが本当に鳥海を任せるに足る男なのかは結局分からない。けど、それができるかできないかは大事だ。
「約束できない」
……なのに、こいつはこんなことを言いやがる。
文句を言おうとした俺を封じたのは、こっちを見据える提督が一歩も引く気のない男の目をしてると感じたからだ。
「守れない約束はしない――摩耶だって分かるだろ」
睨み合いというよりは軽く、見つめ合うと呼ぶには穏やかじゃない相対はあたしの方が先に折れた。
「だから、あんたは合わないんだ。嘘でもこんな時は約束するほうがいいとは思わないのかよ?」
「言ったばかりだろ、できるだけ嘘はつきたくない。大切なやつに嘘をついたり隠し事をするのは辛いんだぞ」
舌打ちしたくなった。
だってそうじゃないか。きっと提督はあたしの言った通りにしようとする。
約束できないと言いながら、そのために力を尽くしてきそうで。
「やっぱ提督とは合わねえな。嘘でもこんな時は約束できるやつの方が、あたしはまだ好きになれる」
本音を別の本音で隠す。あたしはこうやって核心から遠ざかってしまうんだ。
「くくく……それは悪かったな」
嘘か本当かも分からないことを言う提督はあまりあたしの言ったことを気にしてなさそうだった。
色々あったけど、あたしから見た提督は不器用なバカという評価に落ち着いた。
そして心の整理もついたのか、ちょっとした納得もあった。
鳥海と提督の関係は二人が積み重ねていく関係だ。
あたしが横からとやかく言える時期はもうとっくに終わっていたんだと。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
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