過去ログ - 北条加蓮「一番の宝物」 -SS速報VIP

過去ログ - 北条加蓮「一番の宝物」

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45:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:05:31.50 ID:ZDNFok4L0
明るい掛け声。それだけで、頭の中のスイッチが切り替わった。
もう昔話もしないし、シリアスな語りもいらない。今日の出来事はすべて終わった。
あとはファミレスなりハンバーガーショップなりに立ち寄ってくだらない話をして、時間が余ったらドライブがてらどっか連れて行って、それで終わり。
……だった、筈だけれど。

以下略

46:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:06:31.72 ID:ZDNFok4L0

「あーっ！　テレビのおねえちゃんだー！」

以下略

47:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:07:31.48 ID:ZDNFok4L0
「……うん？」「お？」

質素な服の女の子が、とてとてとて、と危なっかしい足取りでやってくる。
３歳か、４歳くらいだろうか。
顔をオレンジ色にして、わー、と加蓮にキラキラとした眼差しを送っている。

以下略

48:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:08:31.60 ID:ZDNFok4L0
「すごーい！　テレビからでてきたの？」
「えっ？　っと……うん、そうだよー。お散歩ー」
「すごーい！！」

すごいすごい、と、女の子は加蓮の回りをくるくると回る。

以下略

49:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:09:31.57 ID:ZDNFok4L0
「ねえねえおねえちゃん。おうたうたって！　おうた！」
「お歌？　うーん、そうだねー」

ちらり、と視線が流された。軽く首を縦に振っておいた。
ストリートライブならともかく、病院の廊下でちょっと口ずさむ程度なら咎める必要もない。

以下略

50:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:10:31.75 ID:ZDNFok4L0
「あーる♪　おー♪　えーむ♪　えー♪」
「わぁぁぁぁぁぁ～～～～っ！！」

歌い出したのは、彼女の持ち歌ではない。あれとはまるで真逆の歌。
赤城みりあの歌だった。

以下略

51:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:11:31.81 ID:ZDNFok4L0
……サビに入る直前、こっちを一瞬だけ見た加蓮がなんかドヤ顔していたような気がする。
気のせいだ。気のせいだろうけれど、後でほっぺたをつねってやろう。

「……どう？」
「すごい！　テレビのおねえちゃん、おもしろい！　おうたすっごいうまい！」

以下略

52:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:12:31.63 ID:ZDNFok4L0
「ふふっ。ごめんね。そろそろテレビの中に戻らないといけないから」
「えぇ～～～……」
「そうだ、いい子にしてたらまた来てあげよう」
「ほんと！？　じゃあ、またおうた、うたってくれる？」
「もちろん！　あ、次までに元気になってたら、一緒に歌おうか。その方が楽しいよ」

以下略

53:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:13:31.72 ID:ZDNFok4L0
「あっ、そろそろせんせいがくるじかんだ！」
「……そっか。いい子なら、抜けだしてこんなとこを歩いてちゃだめだよね？」
「ごめんなさーい！」
「ちゃんとお部屋で待っていないとね」
「うんっ！」

以下略

54:名無しNIPPER[saga]
2015/08/09(日) 19:14:31.45 ID:ZDNFok4L0
「――――――」

で。
その加蓮は、子供の姿が見えなくなると共に手を降ろし。
けれど、じいっと、子供が駆け去った先を見続けていた。

以下略

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