432: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:00:27.30 ID:s8phhYh5O
凛は胸の前で拳をぎゅっと握った。
このままこれまでと同じレッスンを続けても――
凛が腕を上げたところで、みくだって自主レッスンをこなして更に数歩先へ進むことだろう。
433: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:03:37.55 ID:s8phhYh5O
――
それからの凛は、だいぶ淀んだ。
434: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:04:28.34 ID:s8phhYh5O
それは一種の被害妄想に過ぎないのだが、凛自身にとっては深刻な問題である。
たとえ無理矢理に鼓舞しようとも、心の安寧を脅かす思考から離れることができない。
自らを磨く為でなく、ただ予定表に書かれているからレッスンをこなす。
435: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:04:58.96 ID:s8phhYh5O
再度ステージに立たせるべきか?
――トラウマが甦ったらどうする。
レッスンにとことん打ち込ませるべきか?
436: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:05:33.92 ID:s8phhYh5O
「休ませる、なのかなぁ……」
ここ最近のレッスン中に見せる凛の顔が、以前に比べて暗く疲れているように感じたから。
少し気分転換が必要だろうか。
437: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:06:17.44 ID:s8phhYh5O
「おう、お疲れ」
Pが手招きをすると、凛はきょとんとした顔でそばへ寄った。
「明日から少し休みをやるから、羽根を伸ばしてみたらどうだ?」
438: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:06:46.29 ID:s8phhYh5O
「それって、もう私なんて要らない、ってこと……?」
気が滅入っている状態では、どんな些細なことも悪い方向に考え、悪い方向に受け取ってしまうものだ。
さらにはタイミングの悪いことに、凛は今、月に一度のナーバスな時期だった。
439: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:07:40.12 ID:s8phhYh5O
「要らない、なんてそんなわけないだろ。上の空の状態でレッスンを何度やってもあまり吸収できないだろうし」
「上の空って何……私はきちんとレッスンしてるんだよ!?」
「それは充分判ってる。でもレッスンスタジオに“ただ居るだけ”じゃ仕方ないしな」
440: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:08:10.71 ID:s8phhYh5O
Pは、どうにも凛の様子がいつもよりおかしいことが気がかりだった。
意識して平静に諭す。
「違う違う。根を詰め過ぎだから、久しぶりに羽根を伸ばしたり、何か好きなことをやったりしてみろってだけ」
441: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:08:37.70 ID:s8phhYh5O
Pもそう云う過ごし方を念頭に、凛へ休息を薦めていた。
しかし、ここで一つミスを犯した。
これまで、凛の生活は空っぽに近かったのだ。
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