645: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:29:02.42 ID:3+pD+bLQo
数日が経って、凛が終業日をきちんと出席し冬休みへ突入したばかりの昼下がり。
事態は思わぬところから背中を蹴られた。
646: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:30:34.41 ID:3+pD+bLQo
そう云って広げたのは二日後に発売予定の、ゴシップで有名な週刊誌の試し刷り。
事前照会のため出版社から送られてきた、独特の光沢ある白黒の写真ページに、でかでかとした表題が踊る。
『――人気急上昇アイドル“R”の黒い交友関係――』
647: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:31:02.45 ID:3+pD+bLQo
タイミングとしては、落とした携帯を拾おうとしゃがみ込んでいる刻だろう。
巧い具合にトリミングして、物を拾う行為ではなく、不良同士がたむろしているような雰囲気を演出している。
しかも、まゆみとあづさの口元をわざと少しボカして、あたかも煙草を咥えているかのように見せていた。
648: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:31:31.57 ID:3+pD+bLQo
「なんじゃあこりゃあ!!」
Pの怒りの叫び声が、社屋全体にこだました。
――パパラッチ。
649: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:32:02.53 ID:3+pD+bLQo
「……社長室案件ですね。俺、行ってきます」
机を叩く勢いで立ち上がったPに、ちひろが告げる。
「Pさん、たぶん行っても無駄だと……思います」
650: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:32:32.09 ID:3+pD+bLQo
「……そうか。ついにこの時がきたかね」
社長が自らの机で記事を読み、紙をデスクに放り投げてから、ふぅ、と溜息を一つ吐いて云った。
651: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:33:01.67 ID:3+pD+bLQo
社長が一口呷って、眉の尻を下げた。
「……ちひろ君は判っているようだね」
「……はい。この記事には、どこにも『CGプロ』または『渋谷凛』と書かれていません」
652: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:33:31.08 ID:3+pD+bLQo
一言もCGプロや渋谷凛とは書かれていないのに、疑問詞ばかりなのに、我々が拳を振り上げたらどうなるか。
内容の虚実に関係なく、“当該記事は我々に関する件です”と自ら認めることに等しい。
相手方から「別に渋谷凛のことだと名指しはしてませんよ?」と云われたら、ダメージを受けるのはこちらだけ。
653: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:34:02.27 ID:3+pD+bLQo
残酷な判断だった。
芸能人となった凛はともかく、その友人たちはあくまで一般人なのに。
「どうしようもないのだよ。下手にこちらが行動してしまうと、動けば動くだけ不利になる」
654: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:34:31.98 ID:3+pD+bLQo
十数分が経ち、ようやくPがクールダウンしてから。
凛にも、発売後にいきなり知らせるよりは、事前に報告しておいた方がよいとの判断で連絡がいった。
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