75: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:54:32.20 ID:s8phhYh5O
画面の中の彼女たちから、ニューシングルリリース告知がなされているが――
「アイドル、好きなのか?」
凛の耳に、ばっさりと思考を裁ち切る言葉が入った。
76: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:55:02.16 ID:s8phhYh5O
凛は、隣を向かず、
「……別に、興味なんてないよ。ただ、どんな世界になってるのかなと思う野次馬根性だけ」
風で揺れる髪の毛を乱雑に梳かして、ややぶっきらぼうに答えたが――
77: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:55:32.42 ID:s8phhYh5O
今度こそ、凛は隣の男をきつい表情で振り返った。
「なにを訳の判らないことを――」
「おいおいそりゃこっちの台詞だよ。こないだも今日も、妙な雰囲気でぼーっとしててさ」
78: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:56:27.67 ID:s8phhYh5O
「だいたいなんなの、物わかりの良いフリだとか何とか好き勝手云ってくれるじゃない。私の何が判るの」
「いや別に君のことは何も知らないけどさ」
凛の眼力に、男は肩を竦める。
79: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:57:23.04 ID:s8phhYh5O
「全身から醸し出してるのは“諦め”……って云ったらいいのかなあ。達観とか諦観とか、ニヒリズム。
そんな鬱屈した雰囲気なんだけどさ、瞳は何かを希求しているように見えるんだよ」
男が、顔を凛に正対させて云った。
80: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:58:01.99 ID:s8phhYh5O
そして、はぁ、と一つ息を吐き、
「それで? 私の眼が何を求めてるって?」
「いや、そんな細かいところまで判らないけどさ。少なくともアイドルには興味あるんじゃないかな、と」
81: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:58:32.24 ID:s8phhYh5O
「これも何かの縁だ、貰っといてくれよ」
凛が几帳面にも振り向くと、彼は名刺を片手で差し出している。
「……こないだの名刺とは違うみたいだけど」
82: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:59:02.10 ID:s8phhYh5O
「ああすまん、茶化す気はないんだよ。つい先日転職してね」
「要らない。別にアンタの名刺なんか貰ったところで何の足しにもならないし」
凛はそうピシャリと断って、回れ右を――しようとした。
83: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:59:32.15 ID:s8phhYh5O
「アンタ……それ……CGプロって……」
「んん? 君、うちのこと知ってるのか? 設立したてだ、って社長は云ってたんだけどなぁ……」
84: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:00:03.34 ID:s8phhYh5O
凛は、名刺から目を離せないまま、訥々と口を開く。
「……こないだ、社長のオジサンから……スカウトされたの」
「あ、そうなの!? なんだ、じゃあ話は早いじゃないか。時間空いてる? 事務所行こう」
85: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:00:33.92 ID:s8phhYh5O
「えぇ? あんなにアイドルを食い入るように見てたし、なんやかんや云っても少なからず興味あるんだろう?
更には既にうちの社長からスカウト受けてて。こんなの断る理由なんか無いじゃないか」
「……だって、凡人の私が、あんな輝く世界でやっていけるとは思えないから」
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