766: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:49:29.87 ID:3+pD+bLQo
Pに映像を見せられて、ステージで演っていた自分では気付かないほど、卯月の影が薄くなっていたと判った。
卯月だって、もっと笑顔を振りまきたかっただろうに。
凛がどう云おうか迷っている間に、ニュージェネレーションへ、ステージ脇の待機へつくよう要請が降りた。
767: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:49:58.41 ID:3+pD+bLQo
演目を終えた凛たちに、大きな拍手と喝采が、屋上全体を揺るがすように響き渡った。
プレイバックして比べる必要がないほど、昨日とは反応が違う。
768: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:50:30.16 ID:3+pD+bLQo
投じた熱量に比例して結果が返ってくるわけではないこの不確定さに、凛は苛ついた。
そしてその『不確定さ』とは、アイドルとしての存在そのものにも関わってくることで。
もし昨日のような“ボタンの賭け違え”がステージではなく自身に降り掛かったら。
769: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:51:30.08 ID:3+pD+bLQo
――
夜、フェス出演者を集めて行なわれたデブリーフィングを終え、解散したのち。
770: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:52:07.55 ID:3+pD+bLQo
「ふぅ、数学終わり。あとは現国……」
背もたれに体重を預け、一つ嘆息した凛は、手許に転がる一口サイズの黒糖羊羹を剥いて頬張った。
『おもかげ』と書かれたそれは、黒砂糖の深い甘さと薫りが鼻へ抜け、南国のような夏の面影を思い起こさせる。
771: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:52:34.52 ID:3+pD+bLQo
アイドルとして避けられない水着姿での撮影仕事は、
既に『夏の準備特集!』などと銘打たれた複数の雑誌で経験済みだ。
だがその紙面は一般人が夏の準備をしようと云うときのために刷られるわけで、発売は当然夏本番になる前だ。
772: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:53:00.98 ID:3+pD+bLQo
身体を起こすと、傍の廊下を、終業した社員が会釈を寄越しながら通り過ぎていくところだった。
凛も目礼を返すが、当該社員の顔に見覚えはない。
最近、社員の数がどんどん増えているので、まだ会ったことのない人が、このビルには何人もいる。
773: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:56:02.84 ID:3+pD+bLQo
階段を上ると、本来は固く閉まっているはずの重い防音扉が少し開いていた。
覗き込むと、第一ダンスレッスン室に、未だ照明が点いている。音もそこからだ。
774: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:57:15.86 ID:3+pD+bLQo
Chase the Chance (1995)
https://www.youtube.com/watch?v=L88wQ8iSff0
775: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:57:42.74 ID:3+pD+bLQo
「――ッ!?」
その瞬間、熱波が身体中を襲ったかのように突き抜け、飛ばされるように尻餅をついた。
腰が抜けて、動けない。
776: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:58:31.16 ID:3+pD+bLQo
曲がアウトロとなり、サビのフレーズをひたすら繰り返してフェードアウトすると、ようやく疾風が止まった。
「……ふぅ」
一気に力を抜いた麗は、少し離れたところに掛けてあるタオルを取ろうと横を向く。
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