過去ログ - 響子「私、やってみたいんです」
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4:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 11:27:12.80 ID:dZXGURXQO


「え? 歌って欲しい……ですか?」
「あぁ。事情はさっき説明した通りで、時間をうまく調整できても限界があるという判断にスタッフも達している。響子、できるか?」
「で、でも曲とかの準備は」
「それはこっちでなんとかできる。運がよかったよ、この時間ならすぐに掛け合えば曲音源くらいは準備できそうだ。……衣装は間に合わないだろうが……」
「そう……ですか」
 返事をする響子にはいつもの元気のよさがない。無理もない話だ。最終日前日の夜にいきなりステージで歌って欲しいというのだ。しかも、ギリギリまで時間を埋め合わせて歌わせる以上、その日は今までと比べるとハードになる事は間違いない。
 ただでさえ炎天下の中頑張っている本人に更なる追い討ちをかけたようなものだ。しかし、
「やらせてください」
「……いいのか」
「はい。私、やってみたいんです」
 響子の目は真っ直ぐに。プロデューサーを見つめていた。
 決意を帯びた目。先ほどまでの気弱な彼女はどこにもいない。かといって明るく、元気という事でもない。まるで――挑戦してみたいという向上心を強くもったような、そんな強い気迫すら感じさせる。
「この前のステージ、覚えてます?」
「あぁ、沙紀と一緒に立ったあの時か」
「はい。私、沙紀さんのおかげでようやく『アイドル』ってものがなんなのか。分かってきたような気がしてきたんです」
 響子は続ける。
「今まで、プロデューサーさんのためにって思ってやってきたけど、あれは違うんだって。確かに私が頑張れば、プロデューサーさんが喜んでくれるし、褒めてくれる。でも、そうじゃないんですよね。私はアイドルだから……ファンの皆さんと一緒にって」
 この前――ようやく、それに気付けたような気がするんです。と口にする。
「私、やってみたいです。この前のようにうまくいくかは分かりません。でも、あの時のような今までに感じたことのない『何か』を私は探しに行きたい。やってみたいです――いいえ、ぜひやらせてください!」
 プロデューサーはその言葉に首を静かに頷かせた。
 それは了解の合図。
 かくして、しゃんしゃん祭り最終日のパフォーマンスに五十嵐響子単独ライブが追加される。
 彼女にとって本当の意味での初めてのソロライブだ――。



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