12:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:45:36.84 ID:wxXWj7PH0
某日、夜。
大淀「あら、提督。お疲れさまです。」
室内灯も灯さぬ資料室に残り、資料を渉猟する提督をようやく見つける。
13:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:46:16.40 ID:wxXWj7PH0
大淀「戦争について?」
提督「あぁ、その通りだ。」
提督は机に開いたノートに肘を乗せ顎に手を当て、電気スタンドの光を嫌う様に反対側を見上げ暫し逡巡したのち、こちらを見据えて口を開く。
14:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:46:57.56 ID:wxXWj7PH0
最悪の日は突然にやってきた。
予てより危惧されていた深海勢力による鎮守府への強襲、それである。
入念に行われていた潜水艦隊による陽動は、敵主力艦隊の防衛ライン突破までの時間を稼ぐに十分であった。
大淀「敵艦隊、二時の方角より危険海域に突入!我が鎮守府に向かい進撃しています!」
15:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:47:45.53 ID:wxXWj7PH0
大淀「提督、秘書艦飛鷹より全艦出撃の旨が送られました。」
提督「そうか。」
官邸は揺れ、窓ガラスが砕ける。戦況は知れないが、残存空母を全て投入しているこの状態でなおも爆撃が続いているということは、敵は鎮守府機能の破壊を第一目標と定めているのだろう。恐らく、前時代的な特攻精神で以て。
16:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:48:55.77 ID:wxXWj7PH0
『深海棲艦ノ反応消失ヲ確認ス。此度ノ諸君ノ栄誉ヲ称エ―――』
焼け跡に立ち尽くす艦娘達を出迎えたのは大淀に設備された洋上用艦隊司令部施設への軍本部からの電報、一つであった。鎮守府官邸も入渠ドッグも、彼女達を迎える影は無く、遠くの防空壕からまた、焦土に向かう一団があった。その先頭には工作艦明石。
軽空母飛鷹は駆け出した、鎮守府官邸跡地へと。瓦解し、焼失したそれに向かう彼女を、艦娘達は呆然と見守った。
焼け跡からは焼死体が発見された。肌は焼け爛れ、人相の判別は付かぬ。幸か不幸か、がれきに埋もれていたその手に嵌めた装飾品は辛うじて原型を留めていた。煤けた木の輪を指に嵌めた焼死体であった。
17:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:49:40.60 ID:wxXWj7PH0
戦後処理が始まった。敵侵攻部隊を背水の陣にて撃滅した栄えある武勲艦隊達は、特例として近隣の鎮守府へと赴き、一時の宿を借りている。艦隊の提督は名誉の負傷により一時戦線を退いている。旗艦大淀からこのような説明を受けた当該鎮守府提督は艦娘の弁に偽りなしとしてこれを了承したのだった。
大淀「どうしたものでしょう…。」
何故素直に提督の戦死を報告しなかったか、問われればわからないとしか返せない。
18:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:50:25.25 ID:wxXWj7PH0
時は遡る。飛鷹は鎮守府跡地の指揮をしていた。生きている設備の可能な範囲での修復であったり、利用可能な資材の発見であったりである。その中に生存者の探索は含まれていない。
何故逃げてくれなかったのか、そんなことばかりを思ってしまう。どうして執務室に―――。
飛鷹「…あ。」
19:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:51:48.29 ID:wxXWj7PH0
飛鷹「これは、確か…提督の日誌?」
確かに彼が幾度かこれを持っていた場面を見た気がする。業務では無いと言っていたからてっきり個人的な物とばかり思っていたが、公的な物だったのだろうか。というよりはただ単純に選り分ける暇が無く一緒くたにしてしまっただけかもしれない。何故か彼はこれを私室で書く事を嫌っていたから、執務室に置かれていたのだろう。
『戦争は変わった』
20:名無しNIPPER[sage]
2015/08/10(月) 21:51:51.33 ID:ouQFR79Zo
素直につまんね
21:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:52:47.96 ID:wxXWj7PH0
『今や、妖精さんと艦娘の他に軍隊は必要無く、僅かな司令系統の為に存在するに過ぎない。』
『だが、そもそも彼女達は何故その少数の人員を必要とするのか。』
『私たち職業軍人と違い、鎮守府に軍籍を置く彼女達が何故軍本部の指令に異を唱えないか。何故艦娘は半ば個々別に独立した鎮守府に所属しながら、自分達より遥かに身体的・戦力的に劣る司令部に従うか。』
『軍艦としての本能、そんな精神論も"我々"らしいと言えばらしいが…、私は一つの事実に気付いた。』
22:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:53:39.82 ID:wxXWj7PH0
『人間は未知の脅威に事前策など打てはしない。』
『となれば、深海棲艦―未知の敵は、艦娘―次代の新戦力と共に誕生したと言い換える事が出来る。』
それはきっと誰もが、殊に艦娘は直観的に理解しているだろう。私たち艦娘と深海棲艦はほぼ同時期にこの世に生を受けた。再び命を貰ったのだと。それ故に何か切り離せない存在である、と。
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