3:名無しNIPPER
2015/08/10(月) 21:39:59.53 ID:wxXWj7PH0
 提督「入ってくれ。」 
  
 大淀「失礼します…ってあら、お邪魔でしたか?」 
  
 部屋に入るなり私たちの手が重なり合っているのを認め彼女がからかう。 
  
 飛鷹「別にそんな事ありませんよ!」 
 提督「別にそんな事言うために来たわけじゃないだろう?」 
  
 周章して不自然に大声になった私の声に提督の沈着な言葉が重なる。その顔に先程の笑みは無く、一度撓んだ指揮官の糸を張り直した面持ちで居る。 
  
 大淀「はっ、失礼いたしました!」 
  
 彼女もまた生暖かい視線を止め、居住まいを正す。上下関係特有の緊張感が支配している訳でもないが、彼等なりのけじめだった。見れば、妖精さんと呼ばれる機器運用の小人、大淀の直属となる電信技士もそれに倣っていた。 
  
 提督「それで、本部はなんと?」 
  
 無理も無い。通常、この鎮守府に所属する艦娘は秘書艦就任時を除き、事務仕事の類に携わることは無い。しかし、鎮守府発足当初から此処で軍本部とのやり取りを担っていた彼女だけは、毎日マルゴーマルマルに受領する伝令とそれに対する打電を任されている。 
 詰まる所、彼女が執務時間外に尋ねるという事はそのまま緊急受電を意味する。 
  
 大淀「読み上げます。『深海勢力ニヨル急襲ヲ受ケ、鎮守府ノ機能ヲ著シク損ナウ事例ハ増加傾向ニアリ。各府ハ近海ノ警備ヲ一層強メラレタシ。』以上です。」 
  
 提督「返信は『日に三度の哨戒を行う』だ。」 
  
 大淀「かしこまりました。至急、打電します。」 
  
 彼女は一度敬礼したのち、退出の旨を述べすぐさま執務室を出ていく。 
  
 提督「成程、ここ最近頻繁に近寄ってきている潜水艦隊はそういうわけか。」 
  
 飛鷹「そうね…。」 
  
 提督「すまないが、夕餉の後はまた一仕事する。飛鷹は」 
 飛鷹「構わないわ。」 
  
 「休んで」と言いかけた提督の口に左手を添え言葉を遮る。銀色の指輪が照明灯の光を受け照り返る。 
  
 飛鷹「あまり根を詰めて仕事してはダメ。」 
  
 提督「…あぁ、そうだな。頼むよ。」 
  
 そう言って快活に笑った提督が自分の口に添えられた私の手を再び取り、握る。 
  
 提督「じゃあ今度こそ食べに行こう。少し休んだ方が上手くいく、だろ?」 
  
 飛鷹「…えぇ、ほんとうよ!」 
  
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