過去ログ - 響「今ここにいる奇跡に」
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5:乾杯 ◆ziwzYr641k[saga]
2015/08/11(火) 22:16:51.04 ID:wqQE0kJT0

 目についた人工被造物を片っ端から爆撃し、海へ向かって悠然と飛び去っていく異形の群。
 後に残された光景。瓦礫の下敷きになった者。火に焼き出された者。
 時を置かずして、家屋を失った者や身寄りをなくした子どもたちが、ターミナル駅周辺や地下道に溢れ返る。
 生活の困窮――物価の高騰、食料の暴騰。買い物に出かけて物乞いの声を聞かぬ日はなくなる。
 大八車に折り重なった、あばら骨の浮いた大人、子ども。まとめて火葬され、共同墓地に埋葬される。

 思考停止に陥った首脳たち。彼らに見切りをつけた側近。
 一族郎党を引き連れて海から最も離れた地、中央アジアの国々に亡命。
 地方都市――食料供給のあからさまな格差に憤る市民たち。
 やがて度々暴動が起こるようになる。そのほとんどが鎮圧される。双方に怪我人と犠牲者が出る。
 より険悪になっていく官民の関係。治安の著しい悪化を招く――世界中。

 抜け出せぬ負の連鎖。台頭、失脚を繰り返す為政者。入れ替わり立ち代わる内閣の顔ぶれ、年に数回のスパン。
 定まらぬ政治。選挙、方針転換の度に混乱し、振り回される官僚たち。
 普遍的な政策の立案、施行さえ困難な状況に陥る。上に立とうとする誰も彼もが支持を失う。

 ある意味納得の事象。世界滅亡を説く類の、自称救世主が蔓延る。
 深海棲艦を神と仰いでありがたがる信者たちが現れる。
 国の対応――求心力の低下を食い止めるべく、官憲に勧誘の取り締まりを強化するよう命じる。

 そんなかつてない混迷期にあって、ある朝、人々の目を釘付けにするニュースが舞い込む。


 『帝国海軍、深海棲艦を撃退か』


 地方紙の一面。戦端が開かれて以来ほとんどなかった、無傷での戦果報告例。
 情報の真偽を疑う者は決して少なくなかった。
 本当にいるかもわからぬ勝利の立役者――皆がいかつい軍人の姿を想像した。

 だがしかし、事実は違った。


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