過去ログ - 仮面ライダーぼっち&ぼっちライダーディケイド(完結編)  
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268:くすっち天頂@公認ぼっち党員 ◆A9VvCAXQOewN[saga]
2015/09/29(火) 13:39:51.95 ID:AuVSUEXb0
驚くほど落ち着いた声で彼女はそう言ってのけた。

だが、それは彼女のこれまでの境遇を考えれば、わからないでもなかった。

幼いころから父と母の願いを叶える為の、道具の様に育てられてきた彼女としては、家族に抱

く感情は憎しみ以外の何物でもないだろう。

「わかりました、すみません、お手数をお掛けしてしまって」

こんな状況でも彼女は、家族のことよりも火野先生に迷惑をかけてしまうことを考えているよ

うだった。

ならば、決して口にしてはならないことだろうが、彼女にとってはむしろ良かったのかもしれ

ない。彼女を、雪ノ下雪乃を縛る大きな鎖がほどけたのだから。

「ゆ、ゆきのん……あたし達も、行って……いいかな?」

由比ヶ浜の表情は、当事者である雪ノ下よりも遥かに暗い。

親友のことが心配でならないと言った風だ。

「心配しなくてもわたしは……わかったわ、ありがとう」

無論俺も、この場にひとり残るつもりはない。

「じゃぁ三人とも、ついてきて!」

「事件があった場所では、怪物の目撃情報がいくらかあるんだ」

「そうですか……姉さんがやったのね」

「雪ノ下さん……」

どうやら火野先生も、彼女の態度から雪ノ下けの事情をいくらか察したようだ。

やはり、この人は聡明だ。

「こんなこと、本当は今言うべきじゃないんだろうけど……」

火野先生は重々しく口をあけた。

「人は、親がいなくても生きていける。もちろん、きちんと子供を愛してくれる親なら、いた

方がいいに決まってるけど、子供のことを道具として思ってないような親なら……いない方が、

ずっとましだ」

火野先生は、苦虫をすりつぶしたような顔をした。人の悪口や、不満などめったに言わない人

がこんなことを言うなんて、本当に珍しい。

「俺の親は政治家でね……ずっと道具の様に俺は育てられてきたよ。英才教育といえば聞こえ

はいいけど、それは全部、あの人たちのためのものだった。あの人たちの、名誉心を目指す為

だけの……」

似ている、火野映司と雪ノ下雪乃の境遇は、驚くほど似ている。

「世界の紛争地帯を旅している時に、俺の止まってた村が敵国に占拠されて、村人も俺もみん

な人質になった。……みんな殺されたけど、俺だけは助かった。政治家の親が、裏で金を回し

たからだ。……でもそれは、俺のことを思っての物じゃなかった。俺がやってきた世界の旅は、

彼らの政治活動の為の美談として使われたんだ……」

「先生にも、そんなことが……」

「家族だからといって、絆があるわけじゃない。血のつながりなんて、みんなが思ってるほど

強くない。……だけどね」

一呼吸おいて、続ける。

「血のつながりもなにもない赤の他人が、命を賭けてでも守りたいと思える人になることもあ

る。それが、人と人とのつながりだよ。って、君達には、こんな言葉必要ないかな」

振り返って俺達三人を順番に見て、火野先生はにっこりと笑う。

「せ、先生っ!」


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