過去ログ - 氷上スミレ「二人のドリーマー」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:20:13.22 ID:BQbk3p4A0
スミレ「んっ……」

 覚醒するのを感じた。まだ少し目蓋が重いが、急速に頭が回っていくのがわかる。昔から寝起きは悪い方ではなかったけれど、今は朝目覚める瞬間が、あまり好きではない。

 とても、寂しい気持ちになるからだ。
以下略



3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:22:28.27 ID:BQbk3p4A0
 同じ部屋で寝泊まりし生活する女の子――大空あかりちゃんは、私の親友だ。

 そう、親友。そう呼べるだけの初めての存在。決して、友人関係が嫌だったわけではない。けれど、特別ほしかったわけでもない。誰とでも普通に接して、誰とでも深くは付き合えなかった。

 元々スターライト学園に入学したのは、交友関係の狭い私を心配した姉の薦めだった。でも結局、あかりちゃんに出会うまで私は変わらなかった。部屋で一人だったというのもあるけれど、普通の学校からスターライトというハコに変わっても、どうしようもなく私は私だったのだ。
以下略



4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:24:23.87 ID:BQbk3p4A0
 あかりちゃんは、私に教えてくれた。誰かと一緒にするアイカツがとても楽しいということを。アイドルは皆ライバルで、傷つけ合うのが怖いと思っていた私を、変えてくれた。

 そんなあかりちゃんがいない、一人の部屋はとても寂しい。眠るときは一緒でも、大空お天気という朝のレギュラー番組を持つ彼女は、午前4時には起床して出て行ってしまう。目を覚ますと、いつも彼女はいない。それが、とてつもなく悲しいのだ。

 今日一日のスケジュールを思い出し、反芻する。そうして誰もいないベッドを見ないように時計を見る。それが私の常だ。
以下略



5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:26:36.30 ID:BQbk3p4A0
スミレ「えっ」

 思わず、声が出てしまった。すぐにベッドに入ったまま顔を左隣に向ける。

 そこには、ちゃんとあかりちゃんがいた。
以下略



6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:28:19.43 ID:BQbk3p4A0
 あかりちゃんを起こさないように、ゆっくりと起き上がる。

スミレ「うふふ、可愛い」

 初めて出会った時、あかりちゃんは何度も私に「美人だ」と言ってくれた。有難いことに、そう言ってくれる人は多い。けれど、あそこまで堂々と面と面むかって言われたのは初めてだ。
以下略



7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:31:27.01 ID:BQbk3p4A0
 すやすやと気持ちよさそうに眠るその顔があまりにも可愛くて、私の身体は知らぬ内に吸い込まれていく。

 間近に見るあかりちゃんの寝顔は、私の知るどんなアイドルよりも魅力的だった。

 床に膝をつき、ベッドの上に頬杖をつく。口角が上がっていくのを感じた。とても、幸せな時間だ。
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:32:24.99 ID:BQbk3p4A0
 時々、考えることがある。いつから私はこんなにもあかりちゃんに惹かれるようになったのかと。思えば、あかりちゃんのオーディションを初めてみた時――あの星宮いちごです事件の時から、不思議な魅力を感じていた。

 ポンポンと弾むようなあかりちゃんの声。姿。直向な姿勢。あの時はまだ、弱く細い小さな輝きだったけれど。それは確かに他人の目を引き付ける、アイドルとしての素質だったのだと思う。それを敏感に感じ取った星宮先輩には、感謝しないといけないな。

 あかりちゃんと出会えなければ、私は今も一人でアイカツしていたかもしれない。あかりちゃんを通じて仲良くなれた、他のアイドルや後輩たちとも、繋がりがなくなっていたかもしれない。それはつまり、私のアイドルとしての限界。
以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:35:50.54 ID:BQbk3p4A0
 ブブブ、ブブブ

スミレ「っ!!」

 あかりちゃんのアイカツフォンルックが震えだす。画面が午前4時になったことを示していた。
以下略



10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:37:23.22 ID:BQbk3p4A0
あかり「あれ…………スミレちゃん?」

スミレ「お、おはよう、あかりちゃん」

 混乱した私は、何故かアラームを止めようと伸ばしたあかりちゃんの手に、自分の手を重ねていた。咄嗟のこととはいえ、何やってるの私。
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:39:58.06 ID:BQbk3p4A0
 少し寝ぼけているのか、手を重ねたまま起き上がった彼女が、やや不明瞭な発声でそう言う。その言葉が、笑顔が、あんまりにも可愛くて、

スミレ「あ、あかりちゃん!」

あかり「きゃっ」
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/08/18(火) 23:42:08.65 ID:BQbk3p4A0
スミレ「あかりちゃん、あかりちゃん、あかりちゃん」

 あの暖かい気持ちが、これでもかというほどに噴出する。胸がいっぱいになって、とっても切なくて。ただあかりちゃんを近くに感じたいと思ってしまう。邪魔な布団を剥ぎ取り、あかりちゃんを直接感じる。ああ、暖かい。いい匂いがする。

あかり「す、スミレちゃん、どうしたの!?」
以下略



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