過去ログ - モバP「事務所に媚薬が蔓延してるだって?」
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4: ◆Freege5emM[saga]
2015/08/24(月) 02:21:33.27 ID:KeG1z5Blo



●【速水奏の場合】




プロデューサーは……貴方は、私のことを『大人びた子』だと言ってくれる。
それが私の魅力だと褒めてくれる。貴方の言葉は、確かに本心からだった。

無邪気だったころの私は、貴方の賛辞で照れ臭さに包まれた満足感を得ていた。



でも、その『大人びた子』の前に、『17歳の割には』という前提が隠れている。

それをはっきりと自覚した瞬間から、私にとっての貴方は一変してしまった。
貴方の口から聞きたかった言葉のすべてが、棘となって私を苛むようになった。



こんなに苦しいのに、辛いのに、それでも私は貴方が――







私は17歳。
年下の子たちからは、お姉さんだと憧れられる。
年上の女性からは、若いわねぇと羨ましがられる。


けれど、もう私は子供じゃないから、貴方の腕へ無邪気に絡みつくこともできない。
そして、まだ私は本当の大人じゃないから、貴方の隣には立たせてもらえない。


だから私は、子供よりもあざとく、大人よりも無鉄砲に貴方へ迫るしかないんだ。



鮮紅色の媚薬は、どんなルージュよりも蠱惑的だった。
唇に乗せてみると、子供用風邪薬のシロップみたいな毒々しい甘さに口内が侵される。

見た目はいやらしいのに、中身は幼稚。
まるで私自身だ。



私が貴方へわがままな媚薬を流し込んであげた夜、
貴方は人が変わったかのように乱暴になって、有無を言わさず私を組み伏せた。

痛みは――確かに痛かったはずなのだけど、そこまで印象に残っていない。
貴方と私が、プロデューサーとアイドルというペルソナを引っ剥がして、
ただの男と女になってしまったことのほうが、私にとって大事だった。



初夜、貴方と別れたあと、私は夜空に月を探した。
月は、貴方が私にくれた曲の舞台で――私にとっては、プロデューサーとしての貴方の象徴だった。
あの頃の私は、貴方に会えなくて寂しい夜に、よく月を眺めていた。

その夜の月は、満月より右側が欠けた十六夜月だった。
貴方に――『大人びた子』と褒めてくれた昨日までの貴方に――責められた気がして、私はカーテンを閉じた。







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