10: ◆.s5ziYqd8k[saga]
2015/08/27(木) 23:16:15.07 ID:hxdoE4+A0
「はー食った食った! 楽しかったなあ、やっぱ現役から聞く話は一番だぜ」
まったくため息が漏れる。仕事は終わったから良いものの、陽はとうに暮れてしまっているというのに。
ここから家までの距離。凄まじく遠くはないが、面倒な事に変わりはない。
もう一度だけ落ちたため息を拾ったのは、思いもよらない方向からだった。
「む、こんな時間にいるとは珍しいな。仕事か?」
カツン、と軽い足音が響く。胡乱げに振り向いた同僚が固まったのが手に取る様に分かって、少し面白い。
「今から家に帰るのかい。しかし、随分時間が掛かりそうだな……ふむ」
細い指を唇に添えて考える、そんな仕草も随分と堂に入っているというか、悔しい事に魅力的だ。
現に、隣の同僚なんぞ顔を真っ赤にして見惚れているじゃないか。
そして、その後の言葉に、一層赤みを増していくのだが。
「私の部屋に泊まるといい。お前の仕事場も、ここからの方が近いだろう」
こっちだ、と俺を見もせずに先導する辺り、身勝手さがうかがい知れる。ため息を吐きつくしたいのだが、そうもいかないらしい。
同僚は捨て置くとして。揺れる金髪が視界から消える前に、俺は彼女を追って歩き出した。
38Res/24.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。