4: ◆.s5ziYqd8k[saga]
2015/08/27(木) 22:11:38.14 ID:hxdoE4+A0
朝になればまた同じ一日が始まる。嫌だとは思わないけれど、それが良いとも限らない。
今日は特に妙な空気だ。街がどことなく、ざわめいている。
同僚の男は何やら知っているようで、興奮した様子で俺へと話しかけてきた。
「なあ、おい、聞いたか? 勇者が来たらしいぞ!」
勇者か。そう呟いた俺をどう思ったのやら。
「最近外に魔物が沢山出ただろ。その討伐に来てくれたみたいなんだ、憧れるよなあ」
適当に頷きを返しても、目を輝かせる浮かれ気味の同僚は気付きやしない。
「いつか俺も剣を買って、魔物を殺して名を上げるんだ……お前はどうだ? 一緒にさ!」
世辞じゃなく、本気で誘っているのだろうけれど、俺には剣は無理だ。
子供の頃に憧れてたし、今でも気まぐれに振ることもある。けどそれは、何かと戦えるレベルじゃない。
それを思い出したらしい。同僚も気まずそうに頭を掻くと、他の奴へと声を掛けていく。
……勇者、か。
魔物を多く殺せる者。男として憧れる気持ちは十分わかるが遥か雲の上の存在だ。倣うことは、まず不可能。
一瞬頭をよぎる思いを振り切って、運ぶべき荷物へと手を伸ばす。立ち上がってしまえば、残ったのは仕事の段取りだけだった。
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