2: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:12:45.10 ID:q3rkBOvNo
大きな月だ。
とても大きくて。赤い。
祖国を遠く離れた南方の洋上で、軽巡洋艦娘矢矧はそれを見ていた。
3: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:14:39.77 ID:q3rkBOvNo
そのどれもが必殺の魚雷を抱えた駆逐艦娘。
突撃の雄叫びもなく、道を照らす灯りもつけず、静かに夜の闇を裂いて忍び寄る暗殺者の群れだ。
4: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:15:20.85 ID:q3rkBOvNo
正直、好きな仕事ではないが、仕方がない。
今度はすべてを護りきる。そう決めたのは自分だと言い聞かせる。
5: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:16:08.97 ID:q3rkBOvNo
そして、それは不安要素の一つとして考慮に入れる程度に起きることでもあった。
「矢矧了解。予定通りで行く。複縦陣、左列第一分隊、右列第二分隊」
6: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:17:42.14 ID:q3rkBOvNo
結果、戦いそのものの継続が難しくなり――その先にあるのは敗北だ。昔の戦争のように。
だから、駆逐艦をどれだけ食い散らかしても、輸送艦が生き残れば作戦は失敗と同じ扱い。
7: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:18:49.01 ID:q3rkBOvNo
矢矧はこみ上げてきた笑いをようやくのところでこらえる。
第一分隊の他二人からも、同じような気配が伝わって来る。
8: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:19:31.75 ID:q3rkBOvNo
どちらにしても、矢矧にとって頭痛のタネであることには変わりがない。
「はいはい。海の平和はお前に任せるよ。その頃にゃ、あたしは宇宙で駆逐艦だ」
9: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:20:13.75 ID:q3rkBOvNo
一連のやりとりの中で、そういった部分へ長波が配慮してくれたのだと、矢矧は素直に感謝する。
「矢矧、馬鹿話はそろそろお終いにして。間もなく進入点よ」
10: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:20:52.76 ID:q3rkBOvNo
「一分隊了解」
「二分隊了解」
11: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:21:28.69 ID:q3rkBOvNo
そのあとには、追撃、反転再攻撃、撤退――用意された選択肢は少ない。
そのどれを選ぶか。決めるのはその場にいる者に任せるのが最適だ。
12: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/27(木) 22:22:14.52 ID:q3rkBOvNo
さしたる根拠もなく矢矧がそう思えてしまうのは、雪風がいつもどこからか掴んでくる幸運のせいだろう。
「司令部及び、支援艦隊に高速暗号通信。『〇二四七、矢矧隊、突撃ヲ開始ス。天地神明ニ作戦完遂ヲ誓フ』」
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