82: ◆tF/D/g0jpg[saga]
2015/08/28(金) 00:51:55.05 ID:axiebuOio
矢矧は静かに目を閉じ、瞑目する。
自分の中から一切の負の感情を追い払うために。
それは、死地に向かうには重すぎる荷物だ。
ギリギリの判断を連続で繰り返し、一秒でも長く生き残るためには、余計な重荷は捨てるに限る。
「矢矧隊、委細承知――」
ギュッと白い手袋をはめ直し、敵機の群れがいる空を睨みつける。
あの時の空のように、低く垂れ込める雲はない。澄み切った空がどこまでも続いている。
きっとあの、暁に染まる水平線の向こうにも。
「全艦左回頭、針路二六〇。両舷前進最大戦速」
矢矧隊は無言のまま、凄惨を極めるであろう戦場に向かって舵を切っていく。
まるで葬列のようなそれを見送るものは、誰もいない。
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