過去ログ - 新選組〜あるいは沖田総司の愛と冒険〜
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164:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/25(日) 23:45:24.69 ID:BjzfPPJeO

追いすがる侍の、藪を駆け抜ける音が背後に迫る。半ば諦め気分で身を起こそうと試みた時にようやく、投げ渡された刀を自分が握り締めているのに気付いた。


「そんなに死ぬのが怖いか。この腑抜けめが」


もう侍は走っていない。足元を気にしながら、抜き身を引っ提げて悠然と斜面を下りてきた。


「俺は警察に出頭する。あんたが女を殺したと訴え出るぞ」

「わめくな。『局ヲ脱スルヲ許サズ』。局中法度其の二を知らんのか」

「人殺し! 誰か! 助けてくれ!」


俺の叫びに応えるのは、自分の声の木霊ばかり。そして相変わらず、救急車のサイレンも聞こえない。


「見苦しい奴だな。今の振る舞いもまた十分、士道不覚悟に値する。しかし腹が減った」


いきなり男の口調が穏やかになった。そして刀を鞘に納める。もちろん俺の方は、自分の刀を抜こうだなんて考えは露ほども起きなかった。

どう考えても勝てるわけはないし、こいつと同じ土俵で斬り合うなんぞ、バカバカしくてやってられない。
真剣勝負を無理強いされる理由がどこにある? 俺の頭はそういう市民の常識に必死でしがみついていた。


「見ろ」




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