過去ログ - 新選組〜あるいは沖田総司の愛と冒険〜
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81:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/28(月) 00:53:09.09 ID:mnWkzDnfO

確かに、女がカードを並べ始めた時から妙な雲行きになっている予感はあった。
女の膝の上にある、唐草模様入りの小洒落た婦人用小物入れから次は何がお目見えするんだろう。ハラキリ用の短刀か。それとも拳銃か。


気がつくと、俺のグラスは氷だけになっていた。そのグラスを、俺は目の高さまでに持ち上げた。


「いい酒ですな。これがお気に入りですか?」


たぶん俺は、酔ったふりをしながら、おびえと追従を混ぜて搗き固めたみたいなとてつもなく醜い笑みを浮かべていたはずだ。

皮肉の混じった笑いが女の顔に浮かぶ。なぜか俺はそんな女の目を、今度はまっすぐ見返すことができた。
いい酒は時として、虚栄心の味方をしてくれる。SAMURAIにふさわしからぬ、卑怯な逃げを打ったにしても。


「ごく普通のレミーマルタンですけど。同じお酒ばかりだと飽きますからね。そういうローテーションは決めています」

「めでたいですね、ローテーションに入れるというのは。私もあやかりたいもんだ」

「ご謙遜を。大事な出張を任されてるじゃありませんか」


「私もあやかりたい」──あえて無遠慮な言葉をぶつけてみたのだが、やはり女の態度は頑強な古城のように小揺るぎもしなかった。
古いヨーロッパをこの西海岸で守り通しているような手合いとは、たぶんそういうものなんだろう。



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