過去ログ - モバＰ「街路樹に銀杏色が視える頃」 -SS速報VIP

過去ログ - モバＰ「街路樹に銀杏色が視える頃」

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7:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:01:28.45 ID:vWepLyU60
「……その……窓が、開いていて」
「はぁ？」
「あと、トタン屋根の一部がヘコんでいたから……たぶん、そのぉ……」
「……アイツはいつからスタントマン志望になったんだ？」

以下略

8:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:02:13.44 ID:vWepLyU60
何を思って２階から飛び降りたのかは分からない。普通に玄関から出たら藍子に気付かれると思ったのだろうか。
いずれにせよ、まさか一緒の屋根の下で眠った相手が翌日になって窓からどっか行くなんて、普通は想像できないだろう。首を横に振ってみせてもなお落ち込む藍子に、お前のせいじゃないから、と繰り返し告げる。
今は、責任問題や再発防止ではない。現状への対応だ。
どうせ対策なんて考えても適用されるのが１年後なのだから。

以下略

9:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:05:58.78 ID:vWepLyU60
もしくはこれはメッセージなのかもしれない。ヒントも抜け道も用意していないから自分で探しに来い、と。
アイツはたまに俺を試すような口調になる。もし自分が倒れたら、自分が無理をしていたら、自分が弱音を吐いたら――常に正答を導き出せるほどの優秀プロデューサーを自負するつもりはないけれど、今もちゃんと人間関係が続いているのだから、致命的な欠点はついていないのだろう。そうだと信じたい。

「逃げたって分かったら連絡をくれよ……そしたらこんなにのんびり来ることもなかったのに」
「……朝早くだったのと……それに、その……」

以下略

10:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:06:43.72 ID:vWepLyU60
加蓮が心配とか、今ごろマズイことになってるんじゃないかとか、考えないのだろうか。
少しだけ咎める気持ちを目に込めたら、いえいえ、と藍子は首を横に振った。

「なんとなく……今年は、少し違う気がするんです」
「違うって？」

以下略

11:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:07:28.73 ID:vWepLyU60
「私は……加蓮ちゃんを、待っていたいなって。だから、加蓮ちゃんを探すのは、Ｐさんがやってあげてください。加蓮ちゃんだって、きっとＰさんに見つけて欲しいと思っている筈ですから。去年は私が見つけちゃったから、なおさらに」
「でもなぁ、」
「もし加蓮ちゃんを見つけた時、Ｐさんの隣に私がいたら、加蓮ちゃん、きっと拗ねちゃいます」
「……………………それは、どういう」
「私に言わせるんですか？」

以下略

12:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:10:29.10 ID:vWepLyU60
少しだけ訂正させてください。
>>10　セリフ５行目
誤：加蓮ちゃんの誕生日のことで、少し、お話をしていましたから」
正：加蓮ちゃんの誕生日のことで、少し、お話をしていましたから。加蓮ちゃん、あまり嫌そうにはしていなかったから」

以下略

13:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:11:13.91 ID:vWepLyU60
その一方で、いつまでもガキっぽいことを繰り返す奴もいる。
思えば気候の変化に身勝手なことを言う俺と、今日という日に未だに意地を張り続けているアイツとは、どこか似ているのかもしれない。

風のない町並みへと歩き出し、秋めいた空を見上げて息を大きく吐く。

以下略

14:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:11:59.15 ID:vWepLyU60

「あれ？　Ｐさんじゃん。やっほー」

以下略

15:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:12:47.37 ID:vWepLyU60
「……お前、何してんの？」
「何って、コンビニから出てきたところだけど？」
「え、いや」
「ねー見てよＰさん。これ、新商品だって。ハッカ飴！　私としてはもう買うっきゃないって思ってさ。ねね、事務所のみんなにもあげちゃおうよ」

以下略

16:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:13:29.53 ID:vWepLyU60
……ただし。
裏側を知っている人間としては、顔をしかめざるを得ない。

「でもミント味ってけっこう人を選ぶんだよねー。誰も合わなかったら私専用の飴？　それともＰさんの眠気覚ましに使っちゃおっか」
「……なあ、加蓮」

以下略

17:名無しNIPPER[saga]
2015/09/05(土) 18:14:14.73 ID:vWepLyU60
参った参った、と加蓮は両手を上げた。しゃら、とコンビニのビニール袋が軽く揺れた。
目が鈍重に泳ぐ。俺からの視線を逃れているというより、観察するために目をきょろきょろと動かしているような感じ。
はい、と俺に何か差し出してきた。コンビニのレジ横で売っているコロッケだった。
その時になって初めて、加蓮は２つのビニール袋を持っていて、さっきの"しゃら"という音はそれらが擦り合った物だと気付いた。

以下略

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