15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:22:35.07 ID:rVNZ4GiQo
〜
「おいしい……!」
「うん、やっぱりひま姉のお菓子はおいしーし」
「ふふ、ありがとうございます」
櫻子は今日の夕飯当番らしく、可愛らしいエプロン姿で現れた。その格好が私にとって見慣れないものすぎて、思わず笑ってしまうと少し恥ずかしがりながら怒ってきた。
すぐに花子ちゃんも降りてきてくれて、カップケーキを二人に手渡した。今回もなかなか良い具合に出来上がっており、中のふわふわ部分の甘さが想像以上に良い仕上がりになっていた。
「ごめんさいね、お夕飯前に……」
「いいしいいし。櫻子のご飯食べる前にお腹を満たしておきたかったし」
「なんだとー!?」
「あらあら、夕飯の献立はなんですの?」
「パスタだから、滅多なことがない限り失敗しないもんねー」
「それでも失敗するのが櫻子の怖いところなんだし……ちゃんとお湯に塩いれた?」
「あ、そっか塩入れなきゃ」
「ちょっと〜……ちゃんとしてほしいし!」
「ふふふ……」
私が一番馴染みのある頃のこの家のテンポを思い出させる。櫻子と花子ちゃんの掛け合いの中にはやはり変わらないものがあった。それをほほえましく見ながら、暖かなムードを無駄にしないよう本題を切り出す。
「ところで櫻子、来週の日曜なんですけど」
「?」
「あなた、何か予定とか入ってます?」
気恥ずかしさから、バレンタインデーという言葉を使わずにその日の予定を尋ねた。どうやら来週の日曜が何日かもわからないらしい櫻子は、茹でようとしたパスタを置いてカレンダーを探した。
しかしちょうど卓上カレンダーの目の前にいた花子ちゃんが、気配りよく日にちを伝えてしまう。
「来週の日曜……2月14日だし。あっ、バレンタインデーだ」
「えっ」
櫻子の表情が少し変わった。それを最後まで確認し終わらないうちに私は視線を逸らす。今は昔よりも多少素直でいられているとはいえ、直に視線を交えてバレンタインのことをまじまじと話せるほどではなかった。
櫻子の視線を横に感じながら、平静を装って予定を尋ねる。緊張で言葉がつまりそうになるのをなんとかリズムよく押し出し、何でもない風を装った。
「その日は私も空いてるんですけど……あなたは?」
「え、えっと……」
予定を聴くだけのことなのに、櫻子はバレンタインデーという事実が意識のどこかにひっかかってしまったのか、少し考え込んでしまった。
別にこの日が開いていなければそれでもよかった。一日過ぎても二日過ぎても私は必ずチョコを作ると決めている。いつか会える時があるのならそれでいい。今更私たちの間で予定が合わないなんてことに不満はない。
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