2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:11:21.33 ID:rVNZ4GiQo
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【前編】〈 Colorful Cookie 〉
「ごめんね、向日葵」
あれは今からちょうど一年くらい前の、中学三年生の冬。すっかり受験一色になり空気もどこか張り詰めていた頃、帰り道に俯きながら隣を歩いていた櫻子が突然私に言ったのだった。
何も謝られる覚えはなかった。この子は例え自分に非があったとしてもそれを認めずに突っ跳ね返してくるような子だ。特にこの私に対して自分から謝ったりするなんて、長い付き合いの中でもそうそうあったことじゃない。
「何がですの?」……私は聞いた。この時は本当に何事かわからなかった。別に謝られるようなことで身に覚えがないからなのだが、それもそのはず……最近櫻子と登下校時以外で絡むことが減っていたのだ。
夏休みに入ったあたりから、私と櫻子の接触は減っていた。今思えばあれは櫻子なりの “気遣い” だったのかもしれない。夏は受験の天王山……その言葉を真摯に受け止めた櫻子は、それまでのように気軽にうちにやってくることも少なくなり、大変な宿題が出ても自分でなんとかすると協力を遠慮し、そうして何気ない会話というものも徐々に減っていってしまったのだった。
一体何を謝ることがあるのか。俯く櫻子の目は髪に隠れて見えなかった。私の返答に櫻子は答えず、結局その日も無言のまま家に着いてしまい、「また明日」とだけ言って別れた。
私も特に重く考えることなく、翌日からもいつもと変わらない微妙な距離感の学校生活を続けていた。自分の受験のことでいっぱいで、櫻子の些細な変化には気を回してあげられなかった。
あの子の方が敏感だったのだ。私たちの距離が離れることに関しては。
それはきっと、櫻子は自分に非があると思っていたからだろう。自分がもっとちゃんとしていればこんなことにはならなかったのにという自責の念を、ずっと抱えていたのだ。
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