27:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:31:54.06 ID:rVNZ4GiQo
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二人の間に残るたくさんの思い出。それを懐かしく拾っていくようなデートは、私の想像以上に楽しく進んでいった。
それは櫻子自身も積極的に楽しもうとしてくれていたことが大きかった。デートなんて初めてであまり自信の無かった私だが、櫻子が楽しいほうへ楽しいほうへと引っ張ってくれる……だからうまくいっているのだろうと思った。
何をしても、何を言っても、櫻子がうまく私を包んでくれる。同じようにして私が櫻子を包んであげ、嬉しそうにしている顔を見れば私も嬉しくなる。
人と付き合うとはこういうことなのかと初めて思えた。大好きな人と一緒なら、何をしていたって楽しい……私はそれを心から実感していた。
「えっ、中学校いくの?」
「校舎内には入りませんわよ。ただちょっと外を回るだけですわ」
雪もちらついて来たデート終盤、最後の最後に行こうと決めていたスポットは七森中学校だった。日曜日の夕方ともあれば人はいないので、気軽に散歩するくらいなら許してもらえるだろう。去年までは私たちもここの生徒だったのだから。
「懐かしいなぁ……まだ一年しか経ってないのに」
「寒さを感じながら歩いていると、なんとなく受験の頃の雰囲気を思い出しますわね……」
「去年の冬も……すごく寒かったよね」
「ええ」
閑散とした学校に音は無く、私たちの会話と足音しかそこには響かない。うっすらと耳に入るぱさぱさという音は雪が降り積もる音か、雪の一粒一粒は大きくなってきていた。
「あら……激しくなってきちゃった」
「これはまた積もるかもね……早めに帰ろうか」
「ああっ、ちょっと待って?」
葉っぱの一つもない細身の枝を牡丹雪で化粧した、ほの白い大桜の下……私は用意しておいたものを取り出す。
「はい、これ」
「あっ……」
「ハッピーバレンタイン。チョコレートですわ」
まるで今の今までバレンタインデーであることを忘れていたような櫻子は、少し驚き気味にチョコを受け取ってくれた。
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