28:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:32:26.73 ID:rVNZ4GiQo
「あ、ありがとう……今少し食べていい?」
「もちろん」
するするとほどいた包装紙を簡単に折りたたんでポケットにしまい、小箱の中のチョコレートを一口かじる。
「……どう?」
「……うん……おいしい。甘い」
「そうでしょう……チョコですもの」
「ううん、なんだろう……なんか懐かしい味もする。学校で食べてるからかな」
櫻子は笑顔のままもう一口をかじり、口の中で溶かしながら小箱をしまった。昔だったら貰ってすぐに全部を食べきってしまうような子だったのに、その振る舞いは大人に近づいた今の櫻子を象徴しているような気もした。
「ここで渡すのも予定のうちだったの?」
「ええ……どこで渡そうかずっと迷ってたんですけど、せっかくだからここで。うまくいったみたいでよかったですわ」
「うん……」
私の考えていたプランの、全行程が終了した。無事に一日を楽しみ切り、最後のチョコレートを上手に渡すことができた……
初めてのデートは大成功だ。間違いなく、ここ最近で一番思い出に残る一日になったと思う。
「ありがとう、櫻子……」
「え?」
「いえ、今日一日……付き合ってくれて。すごく楽しかったですわ」
「そんなの、私だって」
「あなたと一緒にいる機会が減って……ずっと心配してたんですの」
「心配……?」
「今頃どうしてるのかとか、どんな人になってるのかとか……でもそんな心配よりも、もっと大きな心配があった」
「あなたとこのまま、離ればなれになってしまうんじゃないかって」
「!!」
ゆっくりと、櫻子の目を見据えた。
櫻子の目も、まっすぐに私を見ていた。
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